新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

日本で自殺者が減っている、というニュースの価値とは

The Economist電子版ですが、日本の自殺者が過去20年間で最低水準にまで減ってきた、のだそうです。これを受けて政府は向こう10年で更に3割ほど自殺者を減らしたいという目標を立てたのだとか。

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日本ではあんまり注目されていないニュースではないかと思うのですが、人口減少時代にあって自殺者が増えるようでは深刻な問題だと思われることから、減っているならそれは歓迎すべきニュースと言えるのかなと思います。もしかして、減っているのは人口(そもそもの母数)が減っているからでは?

そのあたりの検証について記事は多くを語っていませんが、減ったところで依然として、日本は10万人当たりの自殺者数で18.5人と、OECD加盟国中第三位の高率だそうです。

大統領令を巡ってアメリカ最高裁の決めたことについて

日本のメディアでも昨日にかけて、米トランプ政権が打ち出した中東6か国からの旅行者を3か月間アメリカ入国禁止とする大統領令が連邦最高裁によって条件付きで容認したという報道が流れました。The Economistも電子版でこれを取り上げています。

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でもその条件とはどんなものなのか?しっかり触れた報道は日本では少なかったように思います。The Economistの解説によると、対立軸はトランプ政権とハワイ州、およびトランプ政権と国際難民支援プロジェクトというNGOの二つがあるようです。決定では10月以降に、最高裁判事の立会いの下で対立する各者による口頭弁論が行われるとのことが謳われているのだそうですが、これが開かれずに終わる可能性もあるとの話。

どうしてかというと、トランプ政権が言っているように3日以内に大統領令を実施すると、おしまいは9月27日となり、10月になるとすでに失効した状態になっているはずで、誰も失効した大統領令の適否を論じることに意味を見出さないのではないか、との読み解きです。ではどうしてこんな変な条件がついたのか?ですが、誰も急がなかった、というのがその背景にあったようで、よく時間がものごとを解決してくれる、などと言いますが、とりあえずの妥協を時間を区切った形で受入れ、口頭弁論の予定を立てることで法的に果たすべき義務は果たした、ということなのかと。

一言で言うとややこしい決定だったということかと思いますが、「条件付き」の内容を伝えない端折った報道に、何だか置いてけぼりを食ったような印象を感じてしまった事例でした。

航空機が良いファイナンスの機会である理由とは

The Economist6月24日号のFinance and economicsには、さきごろパリで開かれた航空ショーにちなんで(?)、航空機を対象としたファイナンスが将来大丈夫なのか注目されている、という記事が出ています。

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航空機をリースするビジネスがこれまでうまく行った理由について。飛行機に乗る人が増えて市場が拡大したことは言うまでもないとして、航空機が何と言っても動産であること。次に中古でも十分な需要があること。借り手がおかしくなれば他に使ってもらうことでキャッシュフローを継続させられますからね。LCCをはじめとして世界には旺盛な需要があり、ボーイングエアバスなど売れ筋のタイプが決まっているので消耗品やスペアパーツ、整備そして運航技術に共通なものが多いのもファイナンスしやすい一つの理由になっているわけですね。The Economistの読み解きでは、「他のファイナンス機会によるリターンが低い」ことも大きな理由になっているようです。

中国で航空機を取り扱うリース会社はここ10年でゼロから50社にも増えたこと、欧州はじめ主要な市場では供給過多の兆候が見られること、利上げがリース料金に影響すること等、ビジネスの曲がり角を予測させる変化もみられるようです。しかしながら今後も航空機を使用する人は増えると予想されていることもあり、経済状況に合わせた柔軟なリースプランは堅く生き残るのではないか、という見立てです。

MINISO、知ってました?

The Economist6月24日号のBusinessには、このほど平壌にオープンしたMinisoという雑貨店の話題が出ています。

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ダイソーユニクロ無印良品を合わせたような(?)店構えは、The Economistによると「中国の企業家と日本のデザイナーの協力による」とのことなのですが、初めて目にする名前だったのでネットで調べてみたところ、すでにソウルなどでは結構知られた店らしいです。

日本で報道されないのは、注目に値しない会社が注目に値しない市場で始めたビジネスだから、ということなのでしょうか。

果たしてこの店は繁盛するのか?売れ行き予想についてThe Economistは比較的好意的な書きぶりですが、併せて「2008年に北朝鮮で携帯ビジネスを始めたエジプトのオラスコム社は、まだ一度も利益送金ができていない。そうこうしているうちに2015年には北朝鮮政府が独自の携帯ネットワークを持つための会社を設立した。」との注意書き(?)も忘れずに記しています。さて。

中国参入って、今ですか?

The Economist6月24日号のFinance and economicsによると、世界の投資インデックス(投資信託などが参照する金融商品の価値指標)に、中国の債権市場のそれは組み込まれていなかった、のだそうです。これまでは規制により外国人が買えなかったから、ということなのですが、今年の7月から香港の債券市場を通じて外国人投資家も購入できるようになる、と言われているとのこと。

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これが実現すると、外国人投資家の資金は香港で中国本土の債券を購入することにも仕向けられるようになり、当然世界の投資インデックスも中国の債券市場の影響を受けるようになるわけで、The Economist的に言うとそれは成長の機会、投資の機会を増やすことにつながるという話だと思います。

 

動かない

ネットで流れているThe Economist6月24日号のAsiaには、進まない日本の受動喫煙防止法についての記事が出ています。

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曰く、自民党国会議員の7割が同法に反対するグループに属していること、国は受動喫煙防止を言いながら日本たばこ産業の株式の1/3を保有していて、毎年多額のたばこ税を取っていることなどを参照しながら、事態が動かないことについての「なぜ」を問いかけています。

内包する二律背反を自力で解決するのは言われてみれば大変なのだろうなと。まずは日本たばこの株を売ることから始めてはどうでしょう。あとは、イノベーションという観点から言えば電子タバコの普及ですかね。そうすれば税収の落ち込みもカバーできるのでは?

そこまで考えると、この事態が動かないのはむしろ不作為によるものではないかとすら思えてきます。焦眉の急ではない、ということについて目に見えないコンセンサスがあるということなのかもしれません。

同じことを報じても

アメリカでは、下院議員が入閣すると議員資格を失い、その議席を埋めるための選挙が行われます。ということで、つい最近行われた4つの下院補欠選挙ですが、いずれも共和党勝利する結果に終わったことは、日本でも報道されていたと思います。

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投票前には大統領の不人気も手伝ってか、共和党の牙城であっても民主党が勝つのでは?といった報道もあったようですが、蓋を開けてみれば僅差だったとはいえ共和党の4戦全勝に終わったことを受け、NHKなどは「踏みとどまった形」と報じました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170621/k10011025071000.html

The Economistの場合、もう少し数字に踏み込んでいまして、4つの選挙区とも過去の投票実績に比較して共和党の得票率が大きく減少していることを報じています。

果たしてそれが次につながる変化なのか?については、民主党から「これは」という提案が示されているわけではない状況でもあり、まだ何とも言えない段階のようです。

ただ、今回の選挙はいずれも共和党の牙城と言われた地域だったことを考えると、踏みとどまったという結果よりもダメージが大きいのではないかと。

株価は強気な相場が続き、本来的には共和党に追い風となっていてもおかしくない状況のはずなのですが・・。この落差が何によるものなのか。巷間言われるような、メディアと政権のぎくしゃくした関係が報道のトーンにも影響しているのか、若干以上気になるところではあります。