新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

好事魔多し?

The Economist電子版には、先日開会したテニスの全仏オープンについて、男子シングルスの優勝候補とされるラファエル・ナダルに関する記事が出ています。

www.economist.com

それによると、今大会のナダルほどコートを支配できるプレーヤーは過去にいなかったということで、大会前の圧倒的な強さもあって、彼が全仏で11度目の優勝を飾る可能性は高いだろうとの見方を隠していません。ただ、結論のところがいかにもThe Economistらしいといえばそうなのですが、過去にブックメーカーの予想で最も優勝確率が高いとされた2009年全仏オープンナダルと2011年全豪オープンフェデラーは、いずれも無冠に終わっているのだとか。

好事魔多し、ということでしょうか?

中国人が海外に出ると

5月19日号のLeadersそしてSpecial reportは、海外を旅行する中国人の数が増加していることについての論評を載せています。

www.economist.com

これだけ多くの中国人がこれだけ世界のあちこちを旅するようになれば、彼らが本国へ持ち帰る見聞によって、中国社会もまた影響を受けることになるというプロセスへの、やや根拠の薄い期待感があるという趣旨のようですが、それは果たしてどうなのでしょうか?

現在の中国にとって、それが理想だと言えるほどの素晴らしいモデルが世界のどこかにあるのか?というふうに考えると判るのではないかと思うのですが、アメリカもヨーロッパも、あるいは日本もそうですが、いずれも社会は傷んでおり、高齢化や格差の拡大あるいは移民問題など根深い悩みを抱えているわけで、「それにどう対応するか」を考えてもらうためには良いチャンスなのかもしれませんが、それ以上の何かを期待できるかというとちょっと疑問です。

原油値上がり

5月16日の日経にはガソリン小売価格の話題が出ていましたが、The Economist電子版には原油値上がりの記事があります。

www.economist.com

それによると、2014年以来の高値だそうで。アメリカのイラン核合意離脱の影響もあるのでしょうか。いずれにしても、円安基調の中で原油高となると、確実にモノの値段は上がるだろうと。これは本当にインフレの時代がくるのかも?

AVs、それは・・・

まさかアダルトビデオのことではありません。The Economist5月12日号のScience and technologyには、各国で開発が進む自動運転車の話が出ています。

www.economist.com

英語で言うと、Autonomous VehiclesすなわちAVs、だそうで。

現在、世界各国のさまざまなプレーヤーが開発にしのぎを削る自動運転車、いやAVsですが、交通ルールの基準となる法律についてのばらつきや、ユーザーたる人間側の感性の違いなど、技術だけではどうしようもない制約条件に直面しているとのこと。

確かに、最終的には人間が乗るわけですから、「ルールには適合していました、でも不測の事態で事故が起きました、結果的に人が死にました。」というパターンは絶対に受け入れられないのだろうと。

人間は勝手な生き物なので、だからと言って厳重な安全管理の下、めんどくさいことは嫌いだし、やりたくないわけです。となると、安全装置自体もどこまで使ってもらえるか。これまでだって、罰則が強化されたことで助手席のシートベルトは常識となりましたが、いまだに後部座席のシートベルトはしていない人も多いのでは?

自動運転の、技術はそう遠くない未来に確立されるとしても、意外にも人間側が制約条件となって、実用化にはまだ少しかかりそうな感触、ですかね。

表紙かぁ・・。

5月12日号のThe Economist、表紙と、そしてLeadersのトップはソフトバンク孫正義社長、そしてシリコンバレーの一大投資ファンドとして注目されているビジョンファンドの話です。

www.economist.com

ビジョンファンドは、ソフトバンクと中東問題についての話で名前の出てこない日はないかもしれないサウジアラビアムハンマド・ビン・サルマン皇太子(その筋の業界ではMbSと略称されています)のジョイントでできた投資ファンドで、AIやロボット、IoTなど「尖った」技術にどんどん投資していることで日本でも知られています。The EconomistのLeadersもさることながら、Briefingでその投資活動の詳細が伝えられたことは注目に値すると思います。

www.economist.com

かなりのリスクを取っていると思われる同ファンドの投資行動ですが、The Economist曰く、「このファンドの評価が定まるまでにはしばらくかかるだろう。ただし、彼のファンドが投資しているテーマの多くが、明日のネット社会を形作るために必要だったり有望だったりするものなので、社会の進歩のために必要な投資をしているとは言える。」という具合に、投資の本質について肯定的な見方をしています。

サウジの皇太子については、ディズニーランド誘致なども含めた急激な自由化政策などが、一部には批判を招いているようですが、それも考えがあってのこと、という読み解きが一般的になりつつあり、それと孫社長の思惑が一致したのなら、確かに注目に値するものだと言えそうです。どうしてだか、日本のメディアでこういう報道が先行することはないんですけど。

年較差の話

今日は、The Economist電子版で目を引いた記事について。

www.economist.com

記事ではオランダの大学の研究者が発表した内容が参照されていますが、地球温暖化(ではなく、気候変動と言った方がより正確だと思われるので、以降はこのブログでもそう書きます)による影響は国や地方によって異なり、年較差の変動も無視できない大きさになるとのこと。たとえばブラジルでは、2100年までに今より2割も年較差(年間の最高気温と最低気温の差)が大きくなるだろうと予測されています。

ざっくりとした分析では、温帯以北に多く分布している先進国ではその度合いが低く、亜熱帯以南に多い途上国でその度合いが高くなっているとの読み解きもあります。

いずれにしても2割とはちょっとびっくりで、仮に夏35度、冬-5度になる土地があったとして、元々の年較差は40度なわけですが、2割増しだとこの格差が48度になるということですから、たとえば夏が38度、冬が-10度くらいになるという計算です。日本は地理的にあてはまらないので大丈夫、みたいな解釈があるのかもしれませんが(なので、日本のメディアはこういう報道にあまり注目しない)、世界的には「だから先進国は対策費をもっと払え」、みたいな論調があるとして、この記事や研究報告はそれを下支えするものになるのかもしれません。日本もまた、そういう社会で生きているということを、明示的に認識できることの重要さをこの記事は物語っているのかなと。

 

3より4

5月5日号のThe Economistは、LeadersとBusinessの2本の記事を割いて、アメリカの携帯電話会社T-mobileとSprintの合併協議について詳しく伝えています。それぞれちょっとずつ違う中身の記事になっていまして、Leadersのほうは合併がもたらす市場の変化と消費者利益、そして大規模設備投資についての考え方が論じられています。

www.economist.com

なんでも、イギリスの調査会社によると、世界の携帯電話市場では、4社が競争している環境では3社による場合に比べると消費者の支払うコストが25%くらい安くなるのだそうで、そうだとするとこの合併協議は認められない場合もありうるのかもしれません(日本では楽天が第四の携帯電話会社になる予定ですが、そうすると価格が下がるという理屈になりますね)。でも協議を仕掛けたT-mobile側には別の勝算があるようで、それは5G回線の充実だそうです。クルマの自動運転などに必要とされる5G技術では、アメリカよりも中国や、どうかすると韓国あたりの先行が伝えられる中、この合併がアメリカ初の5Gネットワークをもたらすものであるというのが当事者の主張だそうです。これについて、The Economistの主張としては珍しく、韓国が進める共用インフラ投資としての5Gネットワーク整備に注目し、一民間企業に任せるよりは、国全体で進めた方が良いのでは?というトーンの批判的な意見を結論にしています。

 

もう一本、Businessの方の記事では、T-mobile側の仕掛けによって当初の目論見が狂ったかもしれないソフトバンクの対応についても書かれています。

www.economist.com

それによると、少数株主としてある程度良い条件を獲得できたようで、説明としては対等合併であっても、今後はT-mobileが主導権を握るであろうことが書かれています。

但し、規制当局の判断についてはまだ難しいところもあるようで、The Economistは過去の判断事例などから50-50の合併が最も望ましいという専門家の見方を伝えています。