新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

トランプが変えたもの

The Economist電子版には、アメリカのトランプ大統領が変質させたのは共和党だけでなく、民主党もまた彼によって変化させられた、という興味深い記事が出ています。

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記事によると、政治的に寄せ集めにすぎなかった民主党が、中道政党からよりリベラル(左翼的?)な考えに立つ人の政党となりつつあることが見て取れます。一介の主婦だったひとがデモに出て官憲に逮捕されるようになるなどの事例も紹介されています。

ちょっと気になったのは、そういう変化の中で党が注目するのが、たとえば性的マイノリティであったり、不法移民であったり、確かに注目すべき人たちなのだと思うのですが、相対的にマジョリティが放っておかれる方向へとシフトしているのではないかという点ですね。

実はこれは、日本の野党にも言える話でありまして、重箱の隅をつついたような自民党の不祥事や、語るに落ちる首相夫人がらみのスキャンダルもどきの話ばかりが先行し、マジョリティへの政治的回答がないがしろにされているという現状は、どうみても合格点を与えられるものではないと思うのです。

何も日本だけではないという話は、こと政治に関しては全く救いにならず、憂鬱をより深刻化させるだけの話に過ぎないのかもしれませんが、何とかならないものでしょうかね。

IT創業はもはや?

The Economist誌6月2日号のBusinessには、最近目に見えて減ってきているベンチャービジネスの起業(スタートアップ)とその原因に関する驚きの洞察が出ています。

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それによると、アマゾン・フェイスブック・グーグルなどIT大手が、競合しそうな分野で急成長しそうなスタートアップを見つけては、①買収する、②対抗サービスを始める、③情報や人材の囲い込みでスタートアップが成長できないようにするなどの対策を取ってきているのだそうで、実際の統計を見ると2015年をピークにベンチャービジネスへの投融資残高は右肩下がりになっているようです。

アメリカだけでなく世界を制覇した感のあるこれらネットビジネスの大手にとってみれば、かつて自分たちが小さかった時からさほど時間をかけずに急成長したのと同じことを後発企業にやられること=自分たちのビジネスが危うくなること、という理屈だろうと思われますが、他方ではかつてパソコンを舞台として繰り広げられた技術開発の中心が(マイクロソフトの時代)、ネットとモバイル環境に移行してきたことにより、これら新興企業にとってチャンスが広がりやすかったという事情もあったようです。それにくらべて最近、ネットとモバイルに代わる新しいインフラが出てきたわけではないことも、競争のレッドオーシャン化を加速させているのではないかと。The Economistによればそれもあって仮想通貨や人工生命などに投資が流れている、ということなのですが。AIやロボットなどはどうなのよ?と突っ込みたくなる部分ではありますが、広くIT分野で考えればこれらのテーマはすでに織り込み済み(大手が奪ってしまった)ということなのかもしれません。もはやアメリカも、創業に向いた土地ではなくなりつつある、IT分野に限ればそういうお話だとすると、時代の変化のスピードに今更ながら驚きを感じざるを得ませんね。

好事魔多し?

The Economist電子版には、先日開会したテニスの全仏オープンについて、男子シングルスの優勝候補とされるラファエル・ナダルに関する記事が出ています。

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それによると、今大会のナダルほどコートを支配できるプレーヤーは過去にいなかったということで、大会前の圧倒的な強さもあって、彼が全仏で11度目の優勝を飾る可能性は高いだろうとの見方を隠していません。ただ、結論のところがいかにもThe Economistらしいといえばそうなのですが、過去にブックメーカーの予想で最も優勝確率が高いとされた2009年全仏オープンナダルと2011年全豪オープンフェデラーは、いずれも無冠に終わっているのだとか。

好事魔多し、ということでしょうか?

中国人が海外に出ると

5月19日号のLeadersそしてSpecial reportは、海外を旅行する中国人の数が増加していることについての論評を載せています。

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これだけ多くの中国人がこれだけ世界のあちこちを旅するようになれば、彼らが本国へ持ち帰る見聞によって、中国社会もまた影響を受けることになるというプロセスへの、やや根拠の薄い期待感があるという趣旨のようですが、それは果たしてどうなのでしょうか?

現在の中国にとって、それが理想だと言えるほどの素晴らしいモデルが世界のどこかにあるのか?というふうに考えると判るのではないかと思うのですが、アメリカもヨーロッパも、あるいは日本もそうですが、いずれも社会は傷んでおり、高齢化や格差の拡大あるいは移民問題など根深い悩みを抱えているわけで、「それにどう対応するか」を考えてもらうためには良いチャンスなのかもしれませんが、それ以上の何かを期待できるかというとちょっと疑問です。

原油値上がり

5月16日の日経にはガソリン小売価格の話題が出ていましたが、The Economist電子版には原油値上がりの記事があります。

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それによると、2014年以来の高値だそうで。アメリカのイラン核合意離脱の影響もあるのでしょうか。いずれにしても、円安基調の中で原油高となると、確実にモノの値段は上がるだろうと。これは本当にインフレの時代がくるのかも?

AVs、それは・・・

まさかアダルトビデオのことではありません。The Economist5月12日号のScience and technologyには、各国で開発が進む自動運転車の話が出ています。

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英語で言うと、Autonomous VehiclesすなわちAVs、だそうで。

現在、世界各国のさまざまなプレーヤーが開発にしのぎを削る自動運転車、いやAVsですが、交通ルールの基準となる法律についてのばらつきや、ユーザーたる人間側の感性の違いなど、技術だけではどうしようもない制約条件に直面しているとのこと。

確かに、最終的には人間が乗るわけですから、「ルールには適合していました、でも不測の事態で事故が起きました、結果的に人が死にました。」というパターンは絶対に受け入れられないのだろうと。

人間は勝手な生き物なので、だからと言って厳重な安全管理の下、めんどくさいことは嫌いだし、やりたくないわけです。となると、安全装置自体もどこまで使ってもらえるか。これまでだって、罰則が強化されたことで助手席のシートベルトは常識となりましたが、いまだに後部座席のシートベルトはしていない人も多いのでは?

自動運転の、技術はそう遠くない未来に確立されるとしても、意外にも人間側が制約条件となって、実用化にはまだ少しかかりそうな感触、ですかね。

表紙かぁ・・。

5月12日号のThe Economist、表紙と、そしてLeadersのトップはソフトバンク孫正義社長、そしてシリコンバレーの一大投資ファンドとして注目されているビジョンファンドの話です。

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ビジョンファンドは、ソフトバンクと中東問題についての話で名前の出てこない日はないかもしれないサウジアラビアムハンマド・ビン・サルマン皇太子(その筋の業界ではMbSと略称されています)のジョイントでできた投資ファンドで、AIやロボット、IoTなど「尖った」技術にどんどん投資していることで日本でも知られています。The EconomistのLeadersもさることながら、Briefingでその投資活動の詳細が伝えられたことは注目に値すると思います。

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かなりのリスクを取っていると思われる同ファンドの投資行動ですが、The Economist曰く、「このファンドの評価が定まるまでにはしばらくかかるだろう。ただし、彼のファンドが投資しているテーマの多くが、明日のネット社会を形作るために必要だったり有望だったりするものなので、社会の進歩のために必要な投資をしているとは言える。」という具合に、投資の本質について肯定的な見方をしています。

サウジの皇太子については、ディズニーランド誘致なども含めた急激な自由化政策などが、一部には批判を招いているようですが、それも考えがあってのこと、という読み解きが一般的になりつつあり、それと孫社長の思惑が一致したのなら、確かに注目に値するものだと言えそうです。どうしてだか、日本のメディアでこういう報道が先行することはないんですけど。