新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アメリカ資本市場の曲がり角

11月25日号は、Finance & Economicsの前のSpecial Reportでアメリカ資本市場の相対的地位低下について論じています。ちなみに、編集長が代わったせいか、最近やたらとSpecial Reportという括りの記事が目立ちます。もとい。

株も債権も、商品取引も、それまで他の追随を許さなかったアメリカ資本市場がSOX法による企業統治のガラス張り化や他国に比べて高い法的コスト、株主の発言力に対する制限(役員報酬を決めるのはアメリカの場合取締役会であることを、あたかも懸念材料であるかのように指摘しています)、SECによる規制などで相対的魅力を損ないつつあることに加え、同時多発テロに端を発する入国管理の強化が災いして、いまや「会議をするならロンドンが便利」ということで金融の中心としての地位を脅かされている、というのがその大筋です。

もちろん、それ以外にもアジアなど新興市場の台頭も(相対的地位、なので)大いに関係あるところでしょう。ただ鈍ったりとはいえ、ADR株(外国企業が米国株式市場に上場している株式のこと。たとえばトヨタの株をNYSEで買うことが出来ます。無論株価は日本のそれに連動するわけですが)をはじめとする厚みのある制度インフラを含めて言えば、やはりアメリカ市場には一目も二目も置いてかからなくてはならないように思えます。我が東証が、システムの能力ダウンで二日続けて取引が出来なくなるというような醜態をさらしたのはついこの間であったように思いますし。ただ、だからと言って現在のような状況が続けば、明らかにアメリカ市場の魅力や優位性は低落しつづけるのも間違いないところかと思います。時代の動きに応じて変化するパラダイムを読み解くこと。このあたりの「独自の視点」がThe Economistの強みであり本領とするところ、でしょうかね。

多少関連する記事として、Finance & EconomicsのページではNASDAQによるロンドン証券取引所LSE)買収のオファーに関する下馬評的な分析も載っています。3月に続く二度目のオファーを出したが、相乗効果がどの程度期待できるかがポイントで、さもなくばLSEには孤独の未来が待っているだろう(=オファーは失敗するだろう)と結んでいます。

その他、科学技術ではガン対策に胎児細胞の動きを制御する方法が使えそうだとか、人間は他人を自分より優れていると評価しがちな属性がある、と言ったような記事が目を引きました。