新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

中東和平とアメリカの困難な道

12月2日号は、Special Reportで中東和平問題を4つの違う切り口で分析、United Statesでイラク問題の打開に必要な実務家としてのジェームス・ベーカー元国務長官への期待(イラク研究グループをハミルトン元下院議員とともに主催)、Lexingtonで米国共和党の地政学的退勢について紹介しています。

アメリカにとって中東問題は、①イラクの実質的内戦、②レバノン内戦の可能性、③出口の見えないパレスチナ問題、④核武装した場合のイランとの敵対である、とまずは大括りに問題を総括して、個別議論を展開しています。

もともとThe Economist誌は、不毛ながらそれが「自由貿易を守るための最善の選択」であるとして、イラク戦争に対する敢然とした指示を明確にしており、それが間接的には(前回の大統領選挙では支持しなかったはずの)ブッシュ政権支持につながっておりました。

今回印象的なのは、Special Reportの二国間関係への目配りで、イランとアメリカ、レバノンとアメリカ、イスラエル・パレスチナとアメリカという多極的な分析を行っていることです。まず明らかに力不足のイラク・マリキ政権へ早期自立を促すことが「名誉ある撤退」につながるものではない、との(かなり怪しい)分析を紹介しています。さらに攻勢をとることが明らかなイランに対しては「それがイランにとっても(外国投資停滞など)機会を失うことになるだろう」と述べているあたりまではイギリス流の空元気が見えるのですが、レバノンを覆う嫌米感やハマスの崩壊というアメリカの期待が危なっかしいものであることなど、Intellegenceの基本はきっちり押さえていますね。