新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ブッシュの後の、大洪水

12月9日号は、アメリカの政界観察記事を載せるLexingtonのページで、ブッシュ大統領の後釜争いが、かつてない混戦となりつつあることを各候補者に関する短評も交えて表題のようなタイトルで紹介しています。その切り口がThe Economistが個々の政治家をどう見ているか(実際の候補と取りざたされている人たちのみならず、先達についても同様)を如実に伝えていて大変興味深いものがあります。

曰く、ブッシュ大統領の政治は「大きな政府、大きな外交」を目指した保守であった、クリントン大統領のそれは中道そのもので、グローバリゼーションを是とするその志向は左傾化の顕著な民主党にあってまだ受け入れられる素地があるのか?など。もちろん、ブッシュ大統領のそれは後遺症と闘わなければいけない共和党各候補の背負う十字架として、またクリントン大統領に関するコメントはヒラリー上院議員についての論評に絡めて紹介されているものですが。

いずれにせよ「08」と呼ばれる次回の大統領選挙が始まるのが13ヵ月後にスタートする予備選挙だそうで、現在この時点で民主・共和両党とも候補者が乱立する様相を呈しているのは前代未聞なのだそうです。

民主党は復活を期するアル・ゴアに対してヒラリー・クリントン、以前にも紹介したバラック・オバマ上院議員、加えて立候補を表明したエヴァン・バイー上院議員とトム・ビルサック州知事(共にアイオワ)など、共和党はジョン・マケイン上院議員、ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長、ニュート・ギングリッチ元下院議長などの名前が挙がっています。

指名争いは両党とも、イラク後の外交・内政が焦点になるところ、両党ともアイデンティティに大いなる疑問符がつけられるだろう、とされています。共和党にとってブッシュ政治の脱却はすなわちギングリッチ型の急進的な政策につながるのか?あるいはブッシュシニアのような「現実路線」に戻るのか?この議論ではネブラスカ州のチャック・ヘーゲル上院議員が現実路線の旗頭として名前が挙げられています。ジュリアーニ元市長は外交タカ派、内政ハト派、マケイン上院議員は改革派だが年齢(70歳)がネックとされています。

民主党リベラル派のイラク政策に対する反発を民主党候補がどう取り込むのか、またリベラル攻撃を強める右派の動きも活発化しているとのこと。

これら強力な候補により、対外的にはイメージの下落、内政的には格差の拡大という問題にアメリカがどう対応するのか、非常に見ものな選挙なので、名前を挙げた他にも有力な候補が今から次々に参戦するでしょう、と締めくくられています。何と言うか、多士済々ですね。子供のなりたいものが大統領、というお国柄が見て取れるような気がします。

「総理大臣!」何になりたいの?と聞かれてそう答える子供が居たら、おそらくその子の周りではその子の答えが一寸ネガティブなイメージと共に話題になったりするのではないでしょうか日本では。あでもそんな子は、居ないかな今日び?

ちなみにThe Americasのページでは、「反米左翼政権」などと一括りにされる南米諸国(親米政権のコロンビアを除く)が、内政的には決してアメリカに振り回されているわけではないことを世論調査を基に論評しています。The Americasの記事は一寸興味があるので、また改めて書こうかな、と思います。