新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

jinnを知っていますか

12月23日号の年末特集記事の中に、ちょっと面白い記事を見つけました。

それは、イスラム諸国で信じられているという、妖精のような不思議な存在、jinnと呼ばれるものについての記事です。聖書では、神はまず天使を作り、続いて自らのイメージに模して人間を作ったとされるところ、コーランでは神はまず光から天使を作り、つづいて煙の出ない火からjinnを作ったのだそうで、人間はその後で土くれから作られたことになっているそうです。jinnは行いの悪さで神の失望を買ったが、アラーを信ずることで人間と同じように存在を許され、地上とは違うパラレルワールドに閉じ込められたのだとか。このあたりは言うなれば「神話」と言うことになるのでしょうが、教育の行き届かないイスラム諸国では、いまだjinnの存在を信じ、怖れる人も数多く、イスラム法学者がその存在を否定しても、何かといえば「jinnの仕業に違いない」「jinnがやった」などという話がまことしやかに語られたりするようです。

取材した特派員に、アフガニスタンソマリアのイスラム教徒は真剣に自分たちがどのようなjinnに会ったかを語ってくれたそうですが、非科学的だの未開だのといって一笑に付すことに、何か違和感を感じます。

The Economistの特派員は、「祈祷の儀式でトランス状態になった参加者が歌い、ドラムをたたき始めた現場には、銃で武装した用心棒も怖がって近づかなかったが、よく見るとそこには何もいなかった」と記事を締めくくっていますが、よく考えればそのような話は私たちのまわりにはいくらでも見つけることが出来ます。

たとえば日本の座敷わらしや水木しげるの描く妖怪たちがそうであるように、あるいは宇治拾遺物語の鬼がそうであるように、今日性を別にすれば、jinnもまた、イスラム文化史の一端を形作る、貴重な無形資産なのではないかと思われるのです。今日性を保っていることでなおさらイスラムの人間らしさを教えてくれる存在だとすら言えるのではないでしょうか。

アラジンと魔法のランプ、に出てくるジニーも、元をただせばjinnのこと、といえば「ああ、あれか。」と納得していただける向きもあろうかと思います。がしかし、ドミノピザやバドワイザーと同じくアメリカと言うフィルターを通してしまっているため、どうしてもディズニー映画の彼とこの記事のjinnは結びつきませんでしたね、私の場合。

この記事についての評価ですが、まじめにイスラムを掘り下げて見つめようとする態度には二重丸、でもその文化性に議論が及ばないところは三角、というのが私の採点です。このように年末特集は時事問題から離れて少し違う角度で「世界」を伝えてくれます。

次回は、アメリカ発で世界のキリスト教社会に大きな影響を及ぼしているペンテコスタル派に関する記事について書こうと重います。