新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

フェアトレードその他に関する意外な底辺の広がり

1月13日号はLeadersでイラク問題(アメリカは敗北した、とおそらく初めて明言)、ロシアとエネルギー問題、胎児幹細胞の研究、中国の会計システム、国家としてのイスラエルとユダヤ人であることの溝、アメリカの州と健保行政など。イラクはその後のBriefingでも詳報されていますので、今週中には一度書いてみたいと思っています。またAsiaでは中国外交の目指すものや、北朝鮮に対する日本の圧力、拉致被害者の自力救済に対する韓国外交部の失態など。全体的に一月も中旬にさしかかり、書き手にリズムが出てきているように感じます。

前半部分で印象に残ったのはLettersのページが12月9日号の"Voting with your trolley"という記事への投稿で埋め尽くされていたことで、普通一つの記事を巡る議論で紙面が埋まるということはないのですが、よっぽど投稿が多かったと見えます。その中で目を引いたものをいくつか。(この記事は私も12月15日のブログで紹介していますのでご参照ください)

『〜消費者の意思決定が環境や世界の貿易の是正、開発促進を左右しない点は同意しますが、何十億の消費者が日々意思決定することは積もれば人類と地球の福祉に影響を及ぼすものでしょう。大規模な改善は大衆の参加なしには不可能で、そのためにこそ財布による投票は意味を持つのです〜』

『〜フェアトレードが補助金であり、新規参入を促すとの分析ですが、実際にはプレミアムは消費者の同意なしには払われないのです。プレミアムは生産増にではなく、家の修理や子供の学費などに使われています〜』

『〜前回の選挙では緑の党に入れました。母は保守党に、近所には労働党に入れた人もいます。確かに投票は大事ですが、それは私たちが政治家の言うことを聞いて決めるものです。でも私たちの考えていることを政治家に聞かせるための手段として、消費を通じて何が私たちに重要かを発信することができるのです〜』

『〜冬にトマトを欲しがる人の気持ちが判りません。季節に合うものを食べればよいのでは?〜』

まあ、さまざまな意見があるものですが、最もなるほどと思えたのは「買物を通じて発言するよりも投票に行くほうが効率的」とするThe Economistの意見に対して「私たちが考えていることを買物を通じて発信したい」という意見でした。確かに選択肢を与えられるだけの選挙と違い、大衆が購買行動を通じて発信できる可能性ははるかに幅広く、説得力もあるものになるのでは、という気がします。

The Economist側も、これには一本取られたという気になったのではないでしょうか(だからこそページを割いた、と私は読みます)。意外にも、底辺の広がりは思ったより広く、深いものだったようです。