新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

自由貿易と失業問題

1月20日号はTrade's victimsというタイトルで、貿易自由化により失業を余儀なくされる先進国労働者の問題を取り上げています。途上国に対して競争力を持たない産業が貿易自由化により雇用能力を失うとき、国家はどのように対峙すればよいのか、という問題です。

元来、自由貿易の旗手を自認するThe Economistですが、やはり今回もまず「失業などの被害にくらべて貿易自由化による経済成長のほうがはるかに大きい」「貿易自由化による失業は全体失業者のうち14%ほどでしかない」等の識者の意見を参照しています。しかる後に、経済活性化のためには自由貿易こそがとるべき道である、そのための備えとして欧州は労働市場の自由化、アメリカは健康保険問題、そしてすべての場合で教育水準の向上を行って、自由貿易により被害を受ける人が発生しないよう対応するのが良い、という意見です。

再チャレンジ支援だのセーフティネットだの、日本で論じられている諸施策にも相通じるものがあるような気がします。記事は全く日本の例を取り上げていませんが、失業者の再就職支援や健康問題に最も熱心な国はデンマークだそうで、フレクシキュリティと呼ばれる柔軟な社会保障制度をうまく運用しているとの報告がありました。フレキシビリティとセキュリティを掛けた造語だと思いますが、失業期間中の収入保障と教育支援を公的援助として実施しており、成果が上がっているそうです。フリーライダーを決め込む輩はいないのだとしたら、それだけでも羨ましい話だと思います。