新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ライス国務長官の憂鬱

1月20日号は、面白い記事が目白押しです。Asiaのページで目を引いたのは中国の「隠されたエイズ村」とでもいう村の存在で、当局がHIVへの注意を行わないまま血漿献血を繰り返した結果、村民の多くがHIVに感染したことを、当局が隠していた(というか、少し前までの中国ではそれが当たり前)という話です。北京五輪を控え、外国メディアへの対応も少しづつ緩和される中で浮かび上がってきた問題のようですが、依然としてメディアへの露出については何らかの圧力も残っているようです。

Americaのページでは、2008年の大統領選挙に関しての論評があり、相変わらずバラック・オバマ民主党上院議員に対する期待が高く、「依然として議論はオバマかそうでないか、を向いておりクリントン夫人にとっては負けレースの展開である」との結論です。

それ以上に目を引いたのはLexingtonのページで、A falling starと題してコンドリーザ・ライス国務長官の退潮ぶりについて述べています。いわく、若くして実力者に認められ階段を上がった彼女は一時期大統領候補にすら擬せられたのに、ブッシュ政権第一期、第二期を通じて外交政策の失敗に関する責任は重い、とされています。若い頃そうであった非情な現実主義者として、上司の宗教的二元論に現実主義の要素を加えることもできたろうに、実際は一の子分としてボスであるブッシュ大統領におもねるだけであった、と厳しく批判されています。国務長官としての資質への疑問もさることながら、いまや大統領候補として彼女を押すという議論は全く勢いを失っているように見えます。

大局的に見れば矛盾しているように思えるのは、The Economist誌は「自由貿易を支持し、それが最善の選択肢であるとしてイラク戦争へ米軍の増派を支持している」はずですが、「イラク政策は失敗だった」とし、民主党の新顔に期待を寄せていることです。かつてクリントンのアメリカについて、外交政策のぶれを批判し、その後の共和党政権には基本的に肩入れしてきた同誌にとって、現在の状態は「原理原則に立ち返ることで選択を変えるべき時に来ている」、ということなのだと思われます。