アメリカ大統領選挙について、ん?
2月3日号ではLexingtonのページでアメリカで力を増す黒人層について報告しています。というか、期待の新星として旗を振ったオバマ上院議員が最近の世論調査で意外と伸びていないためか、「2008年はたとえば副大統領という道もあり、2012年を見据えても有力な候補である。」と言う具合に、議論の方向を上手に変えているようにも見えます。The Economist一流の、ズルガシコイ書き方と取れなくもありません。
たしかに黒人中間層は厚みを増し、黒人政治家もさまざまな方面で実績を残しつつあるわけですが、それはパラダイムを変えることにはつながらず、同誌が言っているとおり「逆説的だが、黒人は人種問題に関する圧力集団のように振舞わない(=黒人問題を「問題」にしない)人ほど生活が良くなっている。」すなわち、既存の白人レジームに身頃を合わせる形でしか実現できていないのだろうと思います。同誌の「意見」は、人種問題ではなく階層問題として(すでに厚みある中間層がいる反面、貧困層も依然として大きい)議論されるべきではないか、ということですが、パウエル・ライス両国務長官の残した実績も含めて、「人種」に起因する能力的な優劣は問題とされるべきでないという点は全くアグリーです。
あとは、Affirmative actionなど社会的弱者となることによる既得権や、ベストセラーになった「ヤバい経済学」でも語られた「黒人貧困層」(人種+階層)というクラスターの再生産による自己保全とのバランス問題なのかな、という気がします。「ヤバい経済学」については以下をご覧ください。