新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

中東問題の複雑さ

2月10日号のLettersは、1月13日号他に掲載されたユダヤ人のディアスポラ(国を失って世界に散らばったこと、または世界に広がるネットワーク)に関する記事への反論やコメントで埋め尽くされています。何週間か前、フェアトレードなどに関する記事に関するコメントがこのページを埋めたとき、「珍しいこと」と報告しましたが、このあたりも新しい編集部の方針なのかもしれません。

続いてのBriefingでは、イラン問題の現状が紹介されていますが、結論のところだけ。すなわち「核を持つイランと付き合うか、武力で核武装を止めるか」の、どちらがより悪い選択かをアメリカが決めかねている、というものです。

佐々淳行さんだったと思いますが、戦況が悪化したときの説明は「予めわかっていたこと」として無用な動揺を防ぎ、戦力の逐次投入で時間を稼ぐ、という負け戦のパターンがあるというような説を読んだことがあります。それに照らし合わせると、イラク戦争後の勢力バランスが崩れることも、イランが決してアメリカの言いなりにならないことも「予めわかっていたこと」なのではないかと思われます。泥沼のイラクに絡め取られて残った選択肢が「どちらが悪いか」だとすると、イラク戦争は負け戦である以前に間違いだったことが改めて浮き彫りになるのではないでしょうか。

かつて「中国一撃論」に支配されてとめどない進軍を続け、補給線が延び切って坂を転げ落ちるように負け戦を強いられた国がありました。ベトナムもそうだったと思いますが、防衛戦争が一撃で守勢の負けに終わるという例は歴史にも多くないように思います。

現状を所与として、それではどうするか、を考えなくてはいけない立場に立つことが多いため、これ以上過去を蒸し返すことはしたくありませんが、超特級の知恵の輪よりも、はるかに複雑な中東問題の一面を改めて考えさせられる記事でした。