新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

証拠より自白、という懲罰文化

2月10日号は、後のほうに引っ越したAsiaのページで、日本の懲罰文化(?)についての記事があり、その中に多少誇張ではないかと疑われる部分がありましたので、これは看過できないと思い、取り上げます。お気づきの方がいらっしゃるかどうか、私はこれまでこのブログであまり日本についての記事を取り出して書くと言うことはせず、日本のメディアと違う視点で捉えられているものを選りすぐって紹介するよう心がけてきました。

その意味では今回の記事も、「日本のメディアはこうは伝えないだろうなあ。」という種類のものですが、その原因は一つではなく、彼我の間にある、ものの見方の違いと許容度の違いとが複合的に働いているように感じました。

記事はまず、無実のまま自白により有罪とされ服役した富山県のタクシー運転手の事件について淡々と報告しています。これに加えて周防正行監督の「それでもボクはやってない(英語タイトル:I just didn't do it)に関する紹介がなされています。日本に先行してプレミア上映された米英でこの映画が紹介したのは、日本ではいかに警察が容疑者を犯人扱いされるか、また裁判官と検事が一緒になって有罪に追い込もうとするか、また被疑者は無罪が証明されるまで有罪であるかのような扱いを受けることが描かれている、との報告です。

それに続いて、日本は先進国の中では大変自白が重要視される国で、自白を得るために警察は留置所での強要や拷問が行われ、時には死者も出すほどである、との記述がありますが、これはいくらなんでも言いすぎではないか、という気がします。

日本の公権に関わっておられる方々の良識ある釈明や反論を期待したいところですが、日本人の意見がLettersに出るのは数年にいっぺんあるかないかなので、今回も言われっぱなし、になる公算が多いような気がします。

センセーショナリズムは、The Economistとの相性が良い考え方ではないように理解していますが、やはり「筆がすべる」ということもあるのでしょうか。それともむしろ私の知見が不足しており、強要や拷問の常態化こそが実情だ、とでも?

どうも気になる後味の悪い記事でした。うーん。