新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

一日あたり

2月24日号のLetters(読者からの手紙)には、2月17日号に出ていた途上国へのワクチン供給問題(資金調達がネックになり、ワクチンの開発が遅れ毎年3百万人もの命が失われている)に関する記事へ、興味深い反論が出ていました。元の記事はワクチン供給を進めるためのプロジェクトがイタリア、英国、カナダ、ノルウェー、ロシアそれにビル&メリンダ・ゲーツ財団により進められていることが報告されています。ただ記事は一寸批判的で、最初の対象が肺炎球菌である点について「すでにこのワクチンは存在するし、克服されるべき点は多少の難点克服だけである。」としたうえで「ガーナの国民一人当たりの保健衛生予算は日額31ドルなのだ。」と締めくくっています。

さて、反論です(基本的にはベタ訳はやりたくないのですが、今回は別)。
「もしもガーナの国民一人当たり保健衛生予算が日額31ドルだとしたら、どんなにすばらしいでしょう。実際にはWHOの計算によれば年額31ドルであり、これにくらべてイギリスは2,047ドル、アメリカは2,548ドルなのです。この痛ましい差異は、保険衛生の研究開発が先進国向けに行われていることによります。メリンダと私は革新的な資金供給メカニズムである肺炎球菌対策AMC(今回のプロジェクト)が民間企業に存在する知見を動員し、先進国と途上国の間の研究開発に関するギャップを縮小し、何時の日か途上国に生まれた人がアメリカやイギリスで生まれた人と健康に関する同等の機会を持てるようになることを信じています。 ビル・ゲーツ ビル&メリンダ・ゲーツ財団共同議長 シアトル」

私ですらたまに「?」と思うことがあるくらい、The Economistは時に情報のハンドリングを誤ります。その精度は日本の製造業とは比べ物にならないくらい実はお粗末なものですが、同時にそれは、めまぐるしく動く全世界を同時性を以ってフォローしていれば、それくらいの誤差は出てしまうだろうな、と思える範囲のものでもあります(逆によくぞここまでフォローしてるよな、と思うことのほうが圧倒的に多いです)。もっとえらいと思うのは、間違いに対する反論をLettersで堂々と紹介することでしょう。この点に世界をリードするメディアの矜持を見る思いがします。