新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

何が危ないかと言うと

3月3日号のLeadersは、2月27日に起こった上海株式市場の暴落に端を発する世界同時株安とその直後の市場の動きについて、プライベート・エクイティを運用する会社への政治的意図に基づく(とThe Economistは言う)攻撃について、中東和平を巡るアメリカとシリア・イランとの対話がイラク政府の仲介により実現する話について、南アフリカANC政権の中期的な展望について、ブッシュ政権と中南米との関係について、英国経済統計の信頼性について、と言った記事が載っています。

たとえその出自がアメリカの傀儡政権であったとしても、和平問題の当事者としてイラク政府がアメリカとイラン・シリアの仲介を(たとえそれが他目的の国際会議であったとしても)志向する態度を見せるのは、ある意味当然とも言える話かと思います。The Economistは成果については懐疑的で、イラン・シリア側の旧態に変化がない以上多くを望むことはできないだろう、との見解です。

いま一つ目を引いたのは南アフリカのANC政権がかつてアフリカ諸国で多く見られた「長期独裁政権」の色合いを帯びてきていること、ですね。黒人中産階級の形成は一つの成果だと思いますが、依然として半数が貧困に苦しみ、黒人側から「アパルトヘイトの時代のほうが良かった」という声が出るにいたっては何をか言わんや、という気がします。このような政治的変革へのニーズが高まりつつある中、選択肢がANCしかないとしたら、それはまさにかつてアフリカ諸国が苦しんだ「団結という名の民主主義否定」の構図だろうと思われます。The Economistが見るところ、ANCの内部崩壊による野党勢力の形成は一つの方向性ではあるようですが、同時にかつて汚職やレイプで職を追われたズマ元副大統領にも復権の兆しが見えるらしく、彼の大統領就任というケースを最悪の選択、と切って捨てています。

かようにさまざまな場面で「危ない」状態が報告されていますが、では最も何が危ないのかと言うと、これら危機意識に対応する具体的な議論が(たとえどのような形でも)なされていない状態、ではないかと思います。それがどこにあるか、については多言を弄しませんが。