新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

経済自由化の進むベトナム

3月31日号はアジアのトップ記事で経済改革と自由化が進むベトナムについて紹介しています。しかしながら共産党政権はそのパワーを手放すことはないだろう、従って一時期のシンガポールや台湾のように、専制的な政治体制を保ったまま経済発展へと向かうのではないか、と言う分析がなされています。

アジアウォッチャーの皆様、この分析をどう思われますか?一つには、言うほどベトナムの経済改革は成果を上げていないのではないか、と言う議論がありますが、具体的には地方のインフラ整備遅れや地元資本の強化不足など、まだまだ外国直接投資や輸出加工区頼みの脆弱な成長基盤しか持たないのが現実だろうと思います。

だとすれば、民族資本の蓄積がやがて民主化を求めるようになる、というにはまだまだ早いとの観測は成り立つわけで、そうするとThe Economistの言っていることにも一理ある、と言えると思います。

しかし今ひとつには専制国家といってもそう長くは持たないのではないか、という議論もあると思うのです。日本、韓国やタイなど域内先進国が民主国家であり、自由主義経済を基盤とする中、仮にベトナムが「遅れてきたシンガポール」を演じたとしても、成長に伴って早晩専制国家の看板を支えきれなくなるのではないか、ということですが。

一つだけ実体験からも言えることは、ベトナムのエリートは概して優秀さを感じさせる人材が豊富であるということです。あれだけ優秀な人間たちが、あれだけの戦乱を避け得なかったのか、という点には歴史の皮肉を見せられる思いがしますが、何故日本が第二次大戦を戦ったのか、という問いにも通じる答えのヒントがそこにあるような気がしています。

優秀な人の揃った国が、自国を荒廃させた戦争の後、急激に経済的な力を増してゆく。そのプロセスの先に待つものは、日本や韓国のようなモデルなのか、あるいは全く違った別のものなのか。個人的にも興味は尽きません。

その他、Asiaのページでは中国の酪農業の発展、東南アジア経済危機が残した爪あと、アメリカ軍に捉えられていたオーストラリア人のアルカイダ系容疑者がオーストラリア内政に与えたインパクト、ネパールの政治体制移行、香港の大気汚染、スリランカ反政府軍による空爆、そして築地魚市場の移転にゆれる日本の東京都知事選などが報告されています。