新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

大きくなった中国

3月31日号は特集記事で政治・経済その他あらゆる面でプレゼンスの強まる中国を取り上げています。執筆者は東京駐在特派員のドミニク・ジーグラー氏です。読んでいて目を引いたのは、経済力の高まり(購買力補正で日本を大きく凌駕するGDP。すでに世界は欧州・アメリカ・中国の三極化が顕著。日本はかつての10%から6%程度に後退)に加えて、周辺各国との領土問題への対応を含め、積極的に外交交渉を進める中国の「ビジョン」に関する証言記事でした。曰く、中国は18世紀以来の超大国としての立場、アジア域内のリーダーとしての復興(ルネッサンス)を成し遂げようとしている、と。

で、小さな疑問を抱くのですが、中国は本当にここに書かれているような、明快且つ首尾一貫した考え方で動いているのでしょうか。まず政治レベルでは、前にも書いたと思いますが「ジャパノフォビア(日本恐怖症)」に取り憑かれたような現政権の反応や、人民解放軍幹部の対露、対米強行発言等を見ていると、たとえ指導部にビジョンと呼べるものがあったにせよ、やはり一枚岩ではありえないだろう、ということが言えると思います。

さらに現在の経済力を支える民間セクターの躍進を見ていると、ごくごく近い未来に競争力ある中国企業のいくつかは多国籍化に進むだろうと思えるのです。アメリカでビジネス教育を受け、一世代前の中国人とは違い英語を流暢にあやつる経営陣に、国内か海外かという選択肢は無意味なものになるでしょうから、その多国籍化の速度はかつての日本の比ではないでしょう。それら企業がグローバルスタンダード(すなわち米欧基準ですが)に則って企業行動を推し進めるとき、果たして今ある中国の「かたち」がどこまで保全されるのか。

翻って、日本を考えるとき先行モデルになりそうなのが韓国です。技術の日本とコストの中国に挟まれ(サンドイッチ)、どちらにも動けない状態のまま停滞を余儀なくされる、という観測が一部にあるようですが、このまま中国の躍進が続くとむしろ経済ではなく政治の面でアメリカと中国の板ばさみになる日本、と言う姿が見えてきませんか?

あまり日本のことをとやかく言うブログにはしたくないのですが、半ば当然の帰結として「国を憂う」お話になってしまいました。とりあえず今日はこんなところで。