新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

世銀総裁、ついに辞任

各方面ですでに報道されているとおり、ポール・ウォルフォヴィッツ世銀総裁が辞任することになりました。当たり前と言えば当たり前の結論までに時間がかかったのは、慎重に対応を検討した国際機関と加盟国政府、また総裁という重責を担う本人との調整が尊重されたからであろうと思われます。後任選びについて、伝統的に米国人が選ばれていることへの疑問も(いつもの話ではあるのですが)各メディアをにぎわせています。いつもどおりであればこれも、疑問が呈されただけで終わるものと思われます(お約束の一幕です)。彼の政治的キャリアはこれで終わりになるのでしょうか?よくわかりません。

任期を全うした前任のジェームス・ウォルフェンソン氏は、最後まで(どうかすると辞めた後も)開発経済学の世界で一定の影響力・ネームバリューを持ち続けた人だったのですが、未だに米国防副長官とネオコンのイメージが強いウォルフォヴィッツ氏が途上国支援の世界で語られ続ける可能性は正直に言って高くないと思います。

ウォルフェンソンの任期前半とIMFの専務理事を長く務めたミシェル・カムドゥシュの時代は、国際金融機関が新古典派経済学の考え方に則り、途上国政府の透明化と効率化に大きな比重を掛けた時代(構造調整の時代)だったと思います。それが却って途上国の政策対応能力を弱らせる結果となり、ポスト構造調整として、一旦はソフト路線に舵を切るかに見えた世銀・IMFが基本的にはインフラ路線へ戻ってきたのがここ数年だったと認識しています。先進国側の政治的要求と、途上国側のさまざまな要請が拮抗する中、どのように国際的金融支援を進めるのか、舵取りはそんなに簡単ではないと思います。