新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

民主主義は危機か

6月9日号後半の記事を読んでいて若干気になったのが、いつものことと言えばそれまでなのですが、欧州周辺の動きに関する情報を通して民主主義の危機を訴えるトーンが強まっているのかな、ということでした。Europeのページではトルコのイラク国境侵攻とクルド人への圧力がもたらす影響について分析しており、クーデター等を念頭に置いた軍と政治の力関係の変化(ちなみに同国の軍部は世俗主義を頑強に支持していると伝えられています)を主題としつつ、EU加盟に向けた同国の立場への影響、そして何より地域の民主主義への影響を懸念するトーンで記事が書かれています。同様に、G8サミットで攻撃的な立場を隠そうとしなかったロシアへの懸念、軍縮への影響等をつぶさに分析しています。さらに面白いと思ったのは、ある意味The Economistならではなのですが、アメリカと中国、ロシアを含めた大国が、力を基盤とする者の寄り合いであるため必ずしも民主主義の庇護者たるものではなく、国連などの多国間機関もそのメンバーの不適切さからまたその任に耐えず、という分析です(これを安保理事会改革を暗に支持するという意味か?と読むのは早計だと思いますが)。

たとえば日本とオーストラリア、というような今までにないアライアンスが重要性を増す、という観察は当たっていると思いますが、どこまでそうか、何のためにそうなるのかという分析が一寸弱いように思いました。経済面の事実関係のみから、オーストラリアは中国を市場とする以上、対外的に民主主義を喧伝するには一定の限界をもつ、という認識のようです。何より日本にとってのニーズがクリティカルではない(日豪関係の安定性はビルトインされている)、という点がすっぽり抜け落ちている、というか改めて議論するまでもない、との整理かもしれませんが、語られていないのが気にかかりました。まあ、日本の雑誌ではないので仕方ないといえばそれまでですが。