新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アジアが産んだ伝説的PKOマンの死

6月9日号のScience and technologyは、抗がん剤の進歩と、ピンポイントでガン細胞を攻撃するタイプの薬も随分進んできたもののやはり今ひとつの段階にあること、量子力学の世界で注目される超シンメトリー理論によるリチウム原子の行動説明(このあたりを臆することなくやってのけるのがThe Economistの真骨頂です。日経を含め、日本のメディアで最新の科学を事務屋に説明しようという姿勢を打ち出しているところを、私は寡聞にして知りません、と言う話は前にも書きましたっけ)、装飾か、または貨幣だったと思われるモロッコで見つかった9万年前の貝殻についての話など。

Obituaryは、独立後のインド軍から国連PKOを指揮する立場に立ち、中東戦争をはじめとする幾多のPKOで指揮官として活躍したインダル・ジット・リクハイ将軍の逝去を伝えています。ガンディー、ネルーらに信頼された将軍は、ヒンズー教徒であるにも拘らずイスラム教徒と親しく、パキスタンの大統領だったジア・ウル・ハクは軍隊時代に彼の部下だったことから、印パをつなぐ架け橋としても重要な役割を果たされたこと、そして何よりアジア人として名誉だと思うのは、世界中から幾多の外交官や軍人が留学したニューヨークのInternational Peace Academyを設立したのが他ならぬ将軍自身だったということです。残念ながら、インターネットで探した限りでは将軍に関する日本語の文献はなさそうです(英語だと伝記等があるようです)。従って、ここで使っている名前の標記も当て字です。英語ではIndar Jit Rikhyeと綴るようです。

名誉あるアジアの英雄として、何かもう少し光を当てても良い存在なのではないかと思いました。メディアは言うに及ばず、日本語で書かれたウェブサイトを調べて何も出てこないという状況では、日本が世界の指導的役割を獲得することにいささか無理があるのかもしれないな、と思ってしまいますね。インドでは、あるいはもしかして中国では、どのような扱いがなされているのか興味がわくところです。