新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

謎に挑む、その理由は?

7月21日号の特集はイランについて、ですがその前に中東・アフリカをざっと概観すると、パレスチナの内紛、オバサンジョ元大統領によるナイジェリアの院政、和平努力から置き去りにされたソマリア、反政府側の内紛により和平合意が脅威にさらされるコートジボアールなど、平たく言うと「平和がない」状態の国々についてのレポートが続きます。CNNなどを見ていてもそうなのですが、和平努力の頓挫や失敗が慢性化したこれら諸国の現状をつぶさに観察することに、ジャーナリズムは何を見出し、どれだけの意義を訴えようとしているのか、読んでいて悲しくなることもしばしばです。反面、立場はどうあれこれらの現状と正対しなくてはいけないのも現在の地球に生きる者の使命であろうと思うと、たとえそれが事実報道の端っこであったとしても、飛ばして読むわけには行きません。さて、イランですが。

イランは核兵器を持っているか?ノー。イランは核兵器をすぐに作る能力があるか?ノー。イランの大統領は独裁者か?ノー。そこまで読み通して、それでは何が国際社会にとって懸念材料となっていて、何故国際社会はイランの核問題を重要視するのか、ということですが、それは何より物理的な脅威というより政治的な脅威を感じているから、ということが特集記事を読んでいると良くわかります。過激ながら、イスラムの教義と民衆の支持を大切にし、一貫性を持ったアフマディネジャド大統領のアジテーションは、自己の権益確保と言う欲目がちらつくアングロサクソンおよび西欧の「国際秩序」と対立することが不可避なのは火を見るより明らかなのですが、核兵器については「今は作れないけど、開発はやるぞ。」と言っているだけながら、それが国際秩序への挑戦、具体的にはイスラエルを抹殺するだのしないだの、という話に及ぶものだから秩序を維持する側としては無視できないことになる、という話ですね。イランは北朝鮮と違い、IAEAを脱退したりすることもなく、自己が納得する範囲で説明責任も果たそうと言う努力はしているように見えます。それでもなおかつ「国際秩序」のためにはイランを分析し、謎を解明し、具体的な解決方法を見つけてゆかなくてはならない、という決意がこの特集記事の裏にはあるように見えます。あれ、国際秩序って、アングロサクソンの権益のこと?だとすると、自分の利益のために他人をどうこうしようって言うの?

そう思うからこそ、アフマディネジャド大統領はとんがるのかもしれません。。。