新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

内憂外患の60年

4月5日号の特集記事は建国60年を迎えるイスラエルについてです。

いわゆる国際社会で出会うイスラエル人は、黒い帽子にもみ上げを伸ばした保守的なユダヤ人であることは多くなく、ごく普通の人であるケースが多いです。それら「普通の人」が多数派なら、国家もまた普通になるのでは?との素朴な疑問に今回の特集記事は明快な説明でNoを示してくれます。

端的に言ってしまえば、シオニズム思想に基づいた建国の歴史がリベラルな民主主義を標榜したい多数派の国民にとって、過去との決別を許さない重たい足かせになっているとの分析ですが、それだけにとどまらず?人口比率でアラブ人やユダヤ原理派が漸増しており、「普通の人」が多数でなくなる日が来るとの予測、?過去60年にわたる投資が成功したのか?という海外ユダヤ人社会からの疑問、?幾重にも積み重なったパレスチナ人との軋轢など、よくぞこんな難しい環境で国家運営をしているなあと、明らかに第三者的感想を抱いてしまう内容となっています。

日本でたまに耳にする話だと思いますが、そもそもイスラエルの建国プロセスにボタンの掛違いがあり、戦勝国、特にイギリスがユダヤとアラブの両方に良い顔をしたことが悲劇の始まりだ、という解釈がありますね。話の真偽もさることながら、それだけが「今」の悲劇の原因のすべてではないこと、むしろ60年を経て脈々と続いているイスラエルの昨日そして今日こそが関心事項であるべきだということを、この記事は示してくれているように感じます。

Europeでは、世俗派が司法を通じて与党をけん制するトルコ、サルコジ大統領が増派を決めたアフガンのベトナム化を懸念するフランス社会、経済でアイルランドを引っ張ってきたアヘーン首相の退任、与野党間に政策の差があまり出ないイタリア総選挙など。Charlemagneは英仏独の足並みの微妙な乱れを三人四脚レースにたとえてEUの先行きに懸念を示しています。