新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

直接決める、ということについて

5月3日号の中盤あたりを読んでます。

まずUnited Statesですが、非合法薬物に関してメタアンフェタミンの規制が奏効し、高校三年生で経験したことのある非合法薬物では数年前には全体の5%弱と、コカインとどっこいだったものが、2007年では1%台に落ちてきています(ちなみにコカインはまだ5%強の高校三年生が経験しています)。原料となる薬剤の規制や密輸の温床であったメキシコでの規制強化によるものだとか。ただ読んでいて救われないと思うのは、消費者側には依然として強い需要があり、「比較的害の少ない薬物へと消費者を導くのは悪いことではない」と、The Economistをして言わせしめるアメリカの現状、でしょうか。

大統領選挙、特に民主党の候補選びについては、直近オバマ氏が盛り返してノースカロライナを大差で勝ったようですが、5月3日号の時点ではライト師の発言に足を引っ張られたオバマ氏の苦戦を伝えるものとなっています。特にLexingtonでは同師の発言内容や過去の行いを伝え、オバマ氏が受けたダメージについても分析しています。

The Americasでは、隣国チリとならんで女性のフェルナンデス大統領が就任したアルゼンチンで、前大統領でもある夫キルチネル氏の経済政策継続が失敗しつつあることへの懸念、規制が厳しく電気自動車の普及が進まないカナダ、集団指導体制を志向するも、若返りがまったく進まないキューバなどについて。また薬物密輸に手製の潜水艦が登場したカリブ海や、小規模政党の離反など、一時の勢力にかげりが見えるベネズエラチャベス大統領についても短い記事があります。

Middle East and Africaでは、決選投票が噂され、同時に政府軍の武力行使の懸念がささやかれるジンバブエ大統領選挙、先住民の洞穴壁画が人類史の黎明期を飾る史料として注目されるアフリカ(全土で20万箇所あるそうですが、私事ながらケニアにいる私の友人宅の敷地内にも立派なのがあります)についてなど。

救われないと思ったのは、コンゴ民主共和国の東端で続く内戦の状況を詳報する記事でした。リンチ、拷問、レイプ、その他残虐行為の内容をつぶさに、具体的に表記してあるのですが、とても日本のメディアでは真似できないだろうと思われるようなことまでしっかりと書き、国際社会に真剣な対応を求めようとしています。ダルフール問題と同じかあるいはそれ以上に、民族対立も根深い同地域への関心が呼び起こされてしかるべき、と思いました。

ブログに書くものためらわれたので、ご興味ある方はメールをお寄せくだされば、個別に簡単な内容の紹介をします(メルアドはプロフィールをご覧ください)。
また英語に自身のある方には、記事の伝えるところを直接感じていただきたいので、こちらをご覧いただければと思います。
http://www.economist.com/world/africa/displaystory.cfm?story_id=11294767
読み手に「何かしなければいけない」という気を起こさせる記事の力が、事実関係を報道することしかしない日本のメディアとはかけ離れていることを実感できる記事です。

Europeで目に付いたのは、スイスほどではないものの、直接民主制が根付いてきているドイツの話でした。道路特定財源も、あるいは暫定税率も、自治体ごとの直接投票をやってみては如何かと考えさせられる記事でした。あとは財源を、受益者に近いところへまわせばよいわけですからね。多少議論は飛びますが、これら中央集権国家体制の持つ弊害についても、力のある記事で伝えるメディアが、いやジャーナリストが、切に望まれるところではないかと、心から思っています。