新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

善は金融を左右しうるのか

9月6日号、後半のBriefingにはイスラム金融についての論評が載っています。語感からするとなにかコーラン時代の遺物のようにも聞こえる金融手法ですが、実は意外と新しく、1970年代に始まった手法のようで、それ以前はイスラム教の人たちも西洋風に金利を取ったり、投機をしたりする金融と付き合っていたとのことです。

それが、だんだんお金がたまってくると、誰でもその使い方を考えるわけで、そうするとそこにイスラムの教えとの相克が見えてきて、じゃあ神様の教える通りにやってしまおう、そのために法学者の判断を仰ごう、という流れでイスラム金融と呼ばれる手法ができあがったようですね、どうも。

特にオイルマネーが潤沢なここ数年は目覚ましい伸びを示しているようですが、宗教的な善を判断要素に取り入れたという手法は、どこか米欧のSRI(社会的責任投資)を彷彿とさせます。もっともSRIは最終的にはマーケットが判断するのにくらべてイスラム金融はまず法学者が判断するという、出口と入口の違いはありますが。

The Economistも前提の議論で認めているようですが、「善を判断要素として持つことのメリット」は確かにあるような気がします。もっともそのための軋轢を覚悟できれば、ということになるのでしょうけれど。

http://www.economist.com/world/mideast-africa/displaystory.cfm?story_id=12052687

Economic focusは「世界で最も重要な価格」として原油、米国金利と並んで中国の労務費をあげています。8億人の労働人口を抱え(アメリカ、EU、日本のそれを全部足して2倍したより多い)、間違いなく世界の工場となった中国の労働者不足は昨今メディアが伝えるようになりましたが、確かに一人っ子政策の影響による急激な平均年齢の上昇や戸籍制度による人口移動への制限など、労働力の不足とそれに伴う人件費高騰につながる状況は時間とともに深刻化しているわけで。戸籍制度は早晩見直され、機会化による合理化が進み、ベビーブーマーの子供たちが労働力となる等の要素もあって、今すぐに中国の労務費単価が急騰する、と言うわけでもないとの分析もあるようですが、いずれにしても要注意項目であることには変わりないようですね。

http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=12052315