新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

11月22日号配本

さて。このブログもほぼ丸二年になるのですが、あれこれ試行錯誤をしてきて少しスタイルを変えることにしました。さしあたり週の頭に配本された週刊誌を概観し、そのあと月曜〜金曜はウェブで読んだ記事や読者コメントを中心にしてみようと思っています。激動の社会を一週間というレンジでは捉えきれないのではないかと思いまして。うまく行かなければこれもすぐ変えるかもしれません。

というわけで、11月22日号なのですが自宅には今日届きました。ひからびた大地のむこう、地平線に今にも沈もうとしているのは太陽ではなくなぜかアメリカの25セントコインです。で、手前にはそれを目指して歩いていた人が前向きに倒れつつそのコインを見ていて、足元にはブラックベリーの通信端末が落ちているという構図で、タイトルはAll you need is cash, Managing in the downturn (ただ必要なのはキャッシュ、落ち込みつつあるときの差配について)となっています。カッコ内は私の訳なのであしからず。

Leadersでは表紙にもなった、経済学でいう流動性の確保すなわち市場の短期資金が詰まりつつあるアメリカ金融市場の困難について。短期資金を提供していたCP市場が金融危機の影響で突然クローズされたのが二か月前。それまでイケイケドンドンでキャッシュフローを最大化するためのリスク無視ともいえるアウトソーシングや合理化にだけ視線が集まっていた経営の考え方があっさりと覆され、羹に懲りて膾を吹くタイプの切り詰めと慎重さがかえって景気を冷やす結果につながっている、との分析です。ヒトのカネ、ヒトの力、自分のコアコンピタンスを組み合わせて短期的収益の最大化を目指す、という理屈は確かに経済がうまく回っている時は相乗効果をもたらしてくれるんでしょうけど、市場の全員が倹約に相務めると、市場は冷えて回らなくなる、という経済学の基礎の基礎を再調整するための「錦の御旗」にはなりませんね、確かに。

その他Leadersは待ったなしの米政府による財政出動、このところ活動が目立たない独・メルケル首相について。GMの子会社だったオペルを救済する手続きを検討しているドイツ政府は金融危機にどのようなスタンスを取るのか。確かにEUで目立っているのは、政府の積極的介入を訴えるフランスのサルコジ大統領ばっかりです。で、イギリスの売春合法化をめぐる議論、北朝鮮の核開発と金正日のスタンスに対する疑問、ソマリア内政と海賊問題、アメリカを中心とする先進国政府による銀行救済が予想より長期化するであろうとの懸念(銀行の独立性に対して、です。日本の金融機関はこの記事をどう読むのでしょうか)となっています。

Lettersでは地球温暖化対策に関する政府の役割を全否定するのは間違いという意見、そして政府に技術の真贋は見極められないという意見、同性婚の賛否を問う運動につぎ込まれた70億円ほどのおカネは41%と高率の初婚者の離婚対策に使われた方が良かったのでは、との意見など。websiteでは2009年のニュース予測という恒例のイベントが始まっています。

Briefingは紛争の後始末について光明が見えないスーダンの現状。Asiaでは経済減速も欧米に比べると比較的緩やかである現状についてなど。United Statesは本格的なリセッションに突入した米経済と消費の停滞について。オバマ新政権が取り組むべき小さな難題であるキューバのグアンタナモ収容所の閉鎖についての懸念、経済停滞により二酸化炭素排出量が削減されているという話、民主党政権登場を前に駆け込み需要に沸く銃砲店など。

長くなるので、Americas以降は明日以降に回します。まとめて書くのも良いのですが、どうしても文が長くなりそうです。