新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

怒りの矛先

まだ多分2月27日号だと思うのですが、Lexingtonが注目したのはオバマ政権の経済対策に対する共和党支持者の「怒り」についてです。ウィル・セルフという学者の説では「社会における感情の量は常に一定」なのだそうで、時代とともに対象が移り変わっても、社会には常に一定量の「怒り」がどこかしらに存在しているのだとか。

で、一連の経済対策に対して、マケイン上院議員は「私が怒っているように見えたとしたら、それは私が怒っているせいだ」、と語り、バーナンキ連銀議長はAIG救済策について「この18ヶ月でこれほどの怒りを覚えたことがない」と語ったそうですが、とにかくアメリカは怒っているようですね。

たしかに、バブルで贅沢の限りを尽くした人や、公的資金の要請に自家用ジェット機でやってくるような人(の会社)に、貴重な税金を使うのか、という議論ははなはだもっともな話で、日本が「失われた10年」を経験するに至った経緯の大きな原因でもあるわけです。迅速な対策、という掛け声は、それだけ議論の機会を奪い、機会を奪われた納税者からすれば、怒りは増幅するばかり、ということになるのでしょう。「日本のようであってはならない」というオバマ大統領の考えは、結論としての姿を捉えたものであり、入り口のところで単純に「だから議論は不要」とまで切って捨てるなら、怒りの増幅度は際限なく高まるのではないかと思われます。

オバマ大統領は、反ブッシュの怒りをアメリカのための力に変えて大統領に当選してきたわけですが、はたしてこの「怒り」のエネルギーをどのように処理できるのでしょうか。The Economistの読み解きでは、オバマ大統領としてはこの怒りを共和党へと向けさせる中、共和党側はオバマ大統領に向けさせようとするだろう、いずれにしても希望は失われる、ということですが。。。