新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

全体主義、もしくは権威主義のほころびとは

6月13日号のMiddle East and Africaですが、私の注目はイランの大統領選挙後の混乱についての報告記事と、それに対する読者コメントです。面白いことに、イランやイスラムを批判する欧米の読者以上に、イランもしくはイスラム社会に属する方々からのコメントが続き、しかも意見は大幅にぶれていて、特定メディアの特定記事に関する書き込み欄という狭い社会だけの話かもしれませんが、イスラム当事者の中にも内在する意見の多様性を実感する機会となりました。イスラムは全体主義か?絶対にそうだ、という元イラン人や、中道を模索する西欧指導者の認識の甘さを批判するトルコの読者、田舎ではアフマディネジャドが勝ったという分析について、イランの都市人口は65%程度のはずだ、との反論の書き込みなど(最後はイラン関係者かどうか不明ですが)、国の複雑さを反映するかのような込入った分析が相次いでいました。

仮にイスラムもしくはアフマディネジャドのイランを全体主義だ(った)とすると、現在起きていることはどうみてもほころびであろうと思わます。実際そうかと言われると、全体主義という言葉には違和感を覚えるものの、いくつもの回教国を訪れた個人的経験から、政治的風土に権威主義的な色彩を感じることは確かにありました。がしかし、それは必ずしも回教国に限った話ではなく、その国の政治にとって宗教と不可分の特性だとはどうにも思えなかった記憶があります。

イランの人口が7千万人、テヘランの人口が1千万人、なんでも30歳以下の人口が全体の3分の2という特殊な人口構成の国らしいのですが、かつて民衆の力でパーレビ国王を追放した国ですので、時間はかかるかもしれませんが、ほころびが裂け目になり、やがて変革が起きることすらありうべし、と思って事態を見つめています。