新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ごくごく小さく

7月18日号のEconomic focusです。

日本でもようやく名前が知られるようになってきた「マイクロクレジット」について、貧困層が貧困を脱出するための特効薬であると証明する統計などの証拠はないが、零細起業家が事業を始めるための資金としては有効である、ただし民間金融に比べて特段の優位性が認められない中、他の資金需要も旺盛なODA予算の中から資金を捻出するやり方が良いのかどうかについては議論が必要である、と言ったような内容の記事でした。

ここでは後発途上国に絞っての話、とお断りしますが、そのような国の貧困層に属する個人が、仮に担保もなしで、契約や金融の知識もなしで、民間金融を頼ろうとしたところで、話の間尺が合わないのは火を見るよりも明らかな話ではないかと思いませんか?金融機関側にもそのようなレベルのローン申し込みについて「目利き」のできる人がいるとも思えません。

小規模金融に携わる金融家というものは、もしかするとどこの国でも似たようなものなのかもしれませんが、目利きになろうとか、需要家側の事情を踏み込んで理解しようとか、「すべきである」との議論は教科書の中ばかりで実際には真逆の対応を取る人が少なからずいるという現実を肌身で感じている私としては、よくも上滑りの議論を臆面もなく書いてくれたものだと思ってしまいます。日本ですら、中小企業の皆さんと一緒に金融機関の窓口を訪れて、「話のわかる」担当者にめぐり合えることは、まずもってそれ自体ですばらしい幸運です。

The Economistも万能ではないと、私が折に触れて批判するのは彼らが製造業の何たるかを踏み込んだ議論ができないことですが、ODA、特に貧困削減についても借り物の議論しかできないのはやはり弱点と言われても仕方ないだろうなと思ってみています。魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えたとして、やはり釣竿も、糸もエサも必要なのです、魚を釣るには。そしてその人がどんな魚を釣るのかは、窓口に座っている人ではなくその人の暮らしぶりについて知っている、ODAの現場を踏んだ人こそがわかる話ではないでしょうか。