新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アラブの変化

7月25日号の特集記事はアラブ社会について、です。さすがアラビアのロレンスを生んだイギリスだけのことはあって、アラブ社会がどう言おうと、国々の成り立ちからの歴史を客観的に見ることにおいてThe Economistには一日以上の長があるように思えます。

特集記事なので、さまざまな視点や情報が盛り込まれていますが、鳥瞰的に言ってなるほどと思わされたのは、アルジャジーラをはじめとする世界レベルのメディアを持ったこととインターネットの普及の二点が、伝統的なアラブ社会のあり方に不可逆的な変化をもたらしたということだと思います。もっともこれは、さらに鳥瞰的に見ればアラブに対してだけではなく、好むと好まざるに関わらず20世紀終盤から世界全体を変質させた大きな「発明」だったわけですが。その意味ではアングロアメリカもまた、変化の度合いや方向性に多少の違いはあれ、大きく影響を受けたことは間違いないのではないでしょうか。

昨年のアメリカ大統領選挙の際に、The Economistが世界の読者に対して模擬投票を実施しましたが、同じことをアフマディネジャド大統領やアサド大統領にやってみても面白いかもしれません。政治的な意味合いを肯定的に訴求するため、「女性限定の」とか、「イランとシリアの人以外の」とかいうちょっとした味付けは必要かと思いますが。

私たちを取り巻く変化に、アラブもまた晒されていて、でもだからと言って一朝一夕にアラブがアラブでなくなるわけではない、のがちょっと難しいところ、でしょうか。一部ではまだ女性の人権は制限され(親族の女性に不義があったら男性はその女性を殺しても罪にならないなど)、死刑は公開で(ごく限られていると思いますが)、面談者は後から来た人を先に片付けるなど、やっぱりアラブ、という側面が消えることはないでしょう。おそらく10年後も、トーンこそ変われThe Economistにとって、やっぱりアラブは興味深い話題を提供してくれる地域でありつづけるような、気がします。