新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

多様性を宝だと思う理由

11月28日号のおしまいより一寸前のBriefingには、「ヒットの世界」と言うタイトルで来月には世界で公開される予定の映画「アバター」の成功水準が500百万ドルを下回ると市場の失望を呼びかねないことを書き表しています。

全世紀末には年間471本程度だったアメリカ国内での映画制作と公開は、昨年は670本にものぼったこと。オンラインビデオの蓄積は、毎秒20時間ごとの映画を作っているに相当sること、しかしながらこのどれもが「ロングテール」には当てはまらないとの議論なのですが、私が多様性=ロングテールの長さを宝だと思う一つ目の理由がここにあります。一つのベストセラーはたくさんの一寸だけ売れる本に適わないこと、それは映像だって同じです。仮にロングテール全体をカバーできれば、それはベストセラーを狙うよりも多くの消費者をカバーすることになるわけで。ところが音楽の世界では多様性に収斂の動きが見られるそうです。最も人気ある上位5%が全ダウンロード数の80%を占めるのだそうで。

理論的には大ヒットを形成する支持者の多数は「それほど多くの選択肢を持っていない」人から形成されるのだそうですが、それだとしばしば歴史的ヒットがごく短時間にうまれることも納得できますね、ということで。特に市場が世界に広がる中では、より多くの単純な市場に訴求したものがより大きなヒットになる、という構図が明らかになります。とはいえ予算も限られ、ヒットの傾向も昔ほど単純でなくなってきている中、企業はどうすれば良いかというと?結論として、金持ちのハリウッドはより大型案件へと走るようになる反面、中くらいのヒットを寄り多様性を以って提供したり、あまり人気のないソフトからはやや厚めのリターンを得るようになるということだそうで。

社会が多様性を許容できると言うことは、それだけのリターンを業界に許容できるということの裏返しらしいですね。それだけ豊かな社会であることの、言ってみれば物差しになっていると言うことなのかなと、この記事を読んでいてそう思いました。