新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アルカイダに関する経営学的分析

1月30日号のInternationalは冒頭で再び動きを強めるアルカイダについての分析を載せています。アメリカの必死の努力にも拘らず、なぜアルカイダは勢力を強めるのか?

さすがに長年にわたる軍事的圧力が効を奏してか、オサマビンラディンを中心とする「コア・アルカイダ」は弱体化または縮小しているようですが、世界全体で見ればアルカイダを名乗る向きはむしろ勢力を盛り返している、ということです。確かに不思議です。

Internationalの分析では、アルカイダとは世界各地のイスラム系過激派がフランチャイズとなって構成されるネットワークによるものだということ、したがってNebulous(星雲のような)であり、Amorphous(非結晶)なので、組織的な打撃を与えることで弱体化するものではない、ということなのですが、だとすると代替的なフランチャイズのネタでも提供しないかぎり、新たな成り手は減らないでしょう。

ではいつまでこれが続くのか、という話ですが、仮にそれがフランチャイズチェーンだとすると、その隆盛は大きくは成り手の意思決定に左右されるので、フランチャイザーたる「コア・アルカイダ」としては常に成り手をひきつけるだけの魅力ある商品やサービスを提供しなくてはならない宿命を負います。だとすると、成り手から見て「コア・アルカイダ」の提案が目立たなくなるような「キラー戦術」を投入することにより成長速度は減速されうるはずですね。

とあるコンビニが恵方巻きを売り出したら、ライバル店も当然追随します。弁当の強化やATMまわりの充実は結果としてほとんど横並びになります。

そういう視点で見ると、イスラム教社会の若者たちにとって、世界のありように自分たちの問題意識を発露させるチャンネルが必ずしも十分でないことがひとつの要因になっているのではないかという発想が沸いて来ます。中東和平問題、米欧型資本主義、既存のイスラム社会と教義の乖離、西欧主導の国際社会なるものの欺瞞その他、その他。

閉塞感と貧困が重くのしかかる社会において、インターネットを通じて過剰に提供される情報が「コア・アルカイダ」のアジテーションに乗っかると潜在的フランチャイジーにとって魅力あるオファーとして捉えられるものになったというのがこれまでの展開だったのではないでしょうか。

元来イスラム教は平和を希求する宗教であることから、彼らの視点で彼らの問題意識に異なったアプローチをする「動き」が出てくれば、そしてそれが教義に適い、かつ魅力的なオファーを流し続ければ、潜在的フランチャイジーやそれを支持する若者たちの目をひきつけることは決して不可能ではないと思うのです。

平和とおカネと希望をセットにして、何らかの努力によってそれが叶う、というようなメッセージとともに具体的な成功への道しるべを提供する、みたいな流れでしょうか。それをイスラムがイスラムの流儀でやれること。この提案もアメリカや西欧などキリスト教社会から出てくるとまたぞろ警戒感を持たれてしまうでしょうから、日本とインドと中国あたりがお膳立てできるようにでもなれば、だいぶ違うんでしょうけどね。