新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アジア共同体の明日

2月6日号のBanyanですが、アジア共同体に関する議論が進まない背景などについて包括的な論評を加えています。端的に言えば、現象面では例外項目の多い自由貿易協定の弱さ、すでに低い関税、低い消費市場の統合性などが共同体構想に今ひとつアクセルがかからない原因ということですが、The Economistが説くところの「かつての宗教に代わる統合の鍵」たる経済面で統合への基盤が整っていないことが最大の原因ではないかと、個人的には見ています。中国にしてもインドにしても、政治的にはしっかりとタガがはまっている中、経済の面で見ると国単位の統一的な利害関係が形成されているとはとても思えない。地域ごとに経済事情は大きく異なるため、中央政府の経済政策がすなわち全国をまとめているという、たとえば日本のようなことにはまるでなっていないという点です。

具体的にはコメ一つ取っても、だれもが同質のコメを受け入れ、消費し、ベストのコメを供給するシステムを国境を越えてまで作ろうと言うようなドライブが、まだまだかかっていない、ということですね。

中国経済、と一言で言っても福建省がシンガポールその他ASEANの国と近いように、東北三省は比較的日本や韓国、ロシアと近く、北京・天津と香港・深セン(土へんに川)、上海はそれぞれ異なる市場を抱えているわけで、早い話が中国という一国が経済的に見れば寄り合い所帯の様相を帯びた存在である、ということですね。インドは州ごとの違いがさらに大きなファクターになってくると思います。

ある程度消費者の嗜好が近く、個別の国々について考え方がまとまりやすければ、共同体的な枠組みを作って相互の利益を求めることはそれほど難しいことではないはずです。まだ各国が早期発展時期にあるころから活動してきたASEANはその好例ではないかと思います。

その視点から言えば、現民主党政権の説くアジア共同体についての議論は、検討を進めるというレベルのものであって、なかなか現状を打破するところまでには行かないように思いますね。誰のための、何のための共同体構想か、という疑問に対して「友愛の」共同体だと言う政治的な意味づけしかできないようでは経済は動かない。日本企業の視点から言えば、多少関税がかかろうが品質面で日本製を使わざるを得ない人は日本から買うだろうし、生産拠点の多くはすでに中国や東南アジアに設立してしまっているので、確かにあればありがたいけれどなくてもさほど困らない、というのが現時点でのアジア共同体ではないかと思います。当座このまま置いておいて、中国やインドの国内経済に関する基盤整備がもう少し進んでから改めて議論する、としたほうが妥当なのではないかと、そんなふうに思っています。