新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

余計なお世話

2月13日号がウェブで流れています。

Leadersはトップ記事にギリシャの信用不安からまたぞろおかしくなりつつある世界経済、続いてその流れでスペインの先行き、トヨタ問題と日本的経営、銀行経営とリスク管理、選挙後のウクライナとイランの核開発という内容です。

世界経済危機の流れが国レベルの信用不安に広がりつつあることは、昨年のドバイショックでも広く認識されておりましたが、ギリシャ、そしてスペイン、ポルトガル、ポーランドとEUの足元が危なくなりつつあることで、さらに危機意識が高まりつつあります。どこにも共通して言えるのが民需の落ち込み、その要因たる労働分配率の停滞について有効な解決策を見出せていないと言うことだと思います。先の経済危機で傷んだバランスシートが回復していない各国の財政では公共投資もままならず、そうかといって経済危機前のアメリカのように、金融工学を使って借金漬けで民需を奮い立たせるという手はもう使えないでしょうし、安い労賃で途上国から入ってくる物産に関税をかけるという手段も自由貿易を阻害することになるため使えません。さらに経済のグローバル化の流れの中で企業は株主のものという考え方が一層強くなったことから、企業は人件費を削っても短期的利益を追い求めがちになってきています。平たく言うと、先進国の労働者が財布の紐を緩めることは、ここしばらく難しいという状況に陥ってしまっているということです。アメリカもEUも、貿易の自由化そしてグローバル化を一貫して叫んできただけに、殊ここに至って真逆の意見は言いづらいに違いありません。漁夫の利を得たのは安く大量の物産を提供できる中国やインドなど新興国というわけですね。

リーマンショックに引き続く金融危機を、公共支出による流動性確保でなんとか乗り切った世界経済ですが、それに引き続く先進国の地盤沈下という現実に対峙せざるを得なくなった、ということですかね。

トヨタ問題は、先週の速報ベースから踏み込んだ記事を期待したのですが、詳報はSchumpeterに取り上げられているリコール対応の技術論に落ち着いたようで、Leadersでは日本の企業統治に関するやや場違いなコメント、すなわち外部取締役が少ない、女性が少ない等のご批判で、おそらくは西洋の方が多いであろう読者へ阿るような結論となっています。ホント余計なお世話としか言いようがありません。本筋はどれだけ顧客志向でいられるかということではないのでしょうか。この視点を読者コメントにアップさせていただきました。