新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

出口が見えません

3月27日号、Economic focusはかつてニクソン大統領がドルと金の交換を突然停止した、いわゆるニクソンショックとそれに続く世界通貨の変動相場制移行、および輸入品への一律10%関税を持ち出して、オバマ政権が中国・人民元と中国からの輸入に対して行うべき政策の方向性を議論しています。

端的に言って、またですか?という感じの元ドル固定相場解消論で、確かに局部的には正しい議論だとは思うのですが、仮に変動相場制に移行したとしたら何が起きるのか?という議論はあまりなされていないようですね。アメリカの国内政治について言えば、変動相場制移行をしないと不当に中国産品が安く流入し、アメリカの雇用が奪われ続ける、という一見わかりやすい批判への明快な答えが得られることになるわけですが、しかし。

プラザ合意以降、日本に対してアメリカがやったことはまさにそれでした。結果としてアメリカに雇用は戻ったのか?むしろ逆で、対日貿易赤字は積み上がり続け、アメリカの製造業はどんどん衰退してゆきました。

意図的に元を安く押さえることは、元の国際的信用に一定の歯止めをかけているともいえるのではないかと思います。読者コメントにもありましたが、安定的な経済基盤を持つ元が変動相場制を通じて安定した強い通貨になると何が起きるか?全世界的とは言わないまでも、一定規模で国際決済通貨として元が使われるようになる、という事態も予想されるわけですが、果たして現在の中国共産党政権が国際決済通貨運営についてしっかりとした責任ある対応の取れる状態にあるのか?と考えるとそこから先は随分とお寒い話になるでしょう。

元の変動相場制移行は中期的には止むを得ないとして、先んじて実施すべきは一部識者の発言にもあるように、ドルに変わる国際決済通貨システムの整備ではないかと思われるのですが、そういったシミュレーションを繰り返しでもしない限り、なかなか出口は見えてこないような気がしています。