新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

新興国でイノベーションは起きるのか

4月17日号の特集記事です。

Leadersで注目度が高かった新興国とイノベーションの関係を深堀しているのですが、前半を眺めただけですがかなり興味深い議論がなされているように思います。曰く、経済規模と成長率の両面で新興国がすでに大きな存在になっていること、曰く、研究開発投資はボーダーレス化しており、新興国は大企業にとってすでに研究開発の中心であること、曰く、市場としても大変魅力的な(貧しいけれども)新興国においてはどのような消費がなされるのか、現場中心の観察が進んでいること、技術を狙った新興国発のM&Aが多発していることなど。

しかしながら、ボトルネックはまだ存在していて、目に見えるもので言えばインドのインフラ、社会システム、中国の汚職などもそうでしょうし、先進国と同レベルのイノベーションを語るにはまだ早い、というのも確かにそうかもしれません。とはいえ。

記事の冒頭で引き合いに出されているのが80年代の日本の自動車産業で、補助金でも安い労働でもない、ジャストインタイム生産やリーン・プロダクションと言われた生産方式そのものが、欧米には考え付かなかったイノベーションであり、早晩それと同じかそれ以上のイノベーションが新興国で起きるだろう、という予想は長期的には外れっこない類のものだろうと思います。なぜなら、市場がそこに「こそ」存在していて、供給者はなんとかして最適化を図ろうとするわけで、その繰り返しの密度が上がることこそイノベーションの源泉たるエネルギーであろうと思うのです。

ピーター・ドラッカーが言っているイノベーションの7つの機会は
1.予期せぬ成功と失敗
2.ギャップの存在
3.ニーズの存在
4.産業構造の変化
5.人口構造の変化
6.認識の変化
7.新しい知識の活用
というものですが、そのどれもがどこの国にも存在しているはずのものばかりです。ではなぜ先進国でばかり目立つイノベーションが起きるのか。

これまでは、企業やインフラ、経済規模などで説明されてきた部分かと思いますが、ことによると創造性と想像力に富んだ人材の差(スティーブ・ジョブス松下幸之助のようなリーダーをイメージしています)ではないのかな、というのが私の現時点での発想です。明日以降、特集記事の後半を読みつつこの考えを検証してゆきたいと思います。