新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

合成生物学の驚異

5月22日号のLeadersから。

ついに、というと大げさかもしれませんが、1995年にバクテリアのDNA解析に成功したアメリカのクレイグ・ベンターとハミルトン・スミスの二人が、人造ゲノムによるバクテリアの合成に成功したのだそうです。これは「先祖を持たない生命」の誕生を意味するわけで、ついに人類は紙の特権であった生命の生成に関与できるようになった、と言う記事です。

このニュース、あまり日本のメディアが騒いだ形跡はありませんね。ゲノム解析が盛んだった数年前から、ある程度予見できたということもあるでしょう。普天間と鳩ぽっぽのニュースのほうがメディア的には価値があったということもあるでしょう。あるいは理系の話はどうも苦手で、と言う人が多いせいなのかもしれません。

いずれにせよ、あまり衆目の集まらない中、確実に生物学はその「ルビコンを渡った(The Economist)」ということになるのだと思います。生物兵器の開発と対応ワクチンの研究や、厳しい環境に耐える強化動植物による食糧増産とDNA情報の商品取引など、予想される近未来の社会構造に影響をおよぼす確かな変革点であるという気はします。「目を外に開く」とは、何も坂本竜馬の海軍かぶれを言うばかりでなく、2010年の日本にもまた、求められる視点だと常々思っているだけに、このようなニュースへの感度の低さはちょっと残念に思います。