新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

9月になりました

8月28日号、Schumpeterは定番と言ってもいいイノベーションに関する記事です。統計を取ってないのでわからないのですが、ここ最近のThe EconomistはSchumpeterやFinance and economicsなどの欄でイノベーションについて書かれる頻度がぐっと高くなったように感じています。それだけアメリカやヨーロッパが(日本もそうだと言えばそうですが)閉塞感に苛まれていることの証拠ではないかと思いますが。

さて、本論では既存企業(特に大企業)の求めるイノベーションと生産性や効率性は二律背反的な性格があり、社員が求められる熟練による生産性向上と企業として求められるイノベーションは両立しないのではないかという視点の議論が交わされています。

イノベーションは思っててできるものとは限らないので、どうしても多様な試行錯誤やムダが発生してしまうわけですが、他方(日本の影響ですかしら)生産性向上が目指すムダのない経営、リーンな生産などは試行錯誤や幅広い経験値の積み重ねを歓迎しないところがあります。むしろそれより単純化・標準化・専門化といわれる(3S)方向へと話を持って行きがちで、結果として短期的な生産性はあがるのでしょうが、はたから見てて思うのは、それじゃ面白くないんじゃないかな、と。

イノベーションに直結するかどうか分かりませんが、「面白い工夫」をすることによって成し遂げられるカイゼンもあるわけで。それが評価されて初めて「やってて面白い」と言える仕事になるんじゃないかと思うわけです。そのためには多少周りのことも見えてたほうが良くて、3Sよりは一見廻り道に見えるくらいの観察や情報収集があるべきで。だとすると方向性は何となく生産性<イノベーションという向きに変わってきませんかね?

かたや大企業ではやれコンプライアンスだのISO9000だのと、「面白い工夫」がやりたくてもやれない風土が広がっています。The Economistによると、大企業の一部には就労時間の一定程度を本業以外の時間(遊び?)として、イノベーションへの取り組みを奨励しているのだとか。そうでもしないとブレークスルーは探せないということですかね。

ただ単に働いていたのではイノベーションなんか探せない。ま、確かにそうとも言えますが、だとしたらあとは科学技術に期待じゃないか、と思ってしまうのは浅はかなんですかね。