新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

さすがにちょっと

ネットでは10月23日号が流れています。
Leadersは、中国の新しい「皇帝」について、好調なトルコ(経済)について、ブラジルの大統領選挙について、懸念されるアメリカの不動産市場について、生物多様性条約について、英国の予算(と赤字)について、となっています。

先週から今週にかけて、中国で党軍事委員会のナンバー2に習近平氏が就任したことを受けて、日本でもメディアが「次のトップは習氏」という報道を流しましたが、The Economistのトップ記事もこれを踏まえたものでした。ただ、一貫して中国の体制には批判的な同紙ながら、今回の書きぶりについては、米欧の読者からも「ちょっと書きすぎじゃないの?」という声が多かったようです。その理由は、記事が改革の必要性を所与のものとして訴えたり、習氏にそれができるのかといったトーンの見解が目立ったからだろうと思います。

日本のメディアでも、習氏の毛沢東礼賛を不安要素として伝える向きがあったかと思えば、夫人が知日派であることや、首相候補と目される李克強氏が日本とのパイプを持つことなどに着目したものがあったりと、報道もいわば様子眺めの域を出ないのですが、まだ何もやっていない指導者に疑問符が付くとすれば、せいぜい言ってもその出自や体制に対するものに限定されるべき、ということは言えるのではないかと思います。

急激な経済成長は迅速な改革を望む、だから中国政府は迅速に改革を進めなくてはならない、でもどうやってトップになったのかというプロセスが良く見えない習氏が率いる中国は、成熟した一人前の国ではなく、不安定でやや偏執的ともいえる内向きな宮廷で、自分のことしか見えていない国である−と思えば落胆も少ないのでは、というのがThe Economistの書きぶりですが、まあ確かに「宮廷」とまで言われなくてはならないものなのかどうか。

文化・民度・政治、そのどれをとっても複雑さと脆弱さが混沌たる現在の中国は、経済成長と言う高速列車に自らが振り回されているというふうにも見えます。オバマ大統領ですらそうだったように、期待して裏切られる可能性も小さくはないと思いますが、新しい指導者の登場にはまずもって敬意と、若干の期待で臨むのが節度であるように感じるのですが、如何でしょうか(無論、不調に終わった場合の備えは忘れないとして)。