新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

顕れたリスク

震災から11日が経ち、このブログもようやくPrint editionの参照に戻ります。と言ってもまだ震災関係のBriefingからなのですが、福島第一原発に関する3月17日時点の記事で、The risks exposedというタイトルが物語る通り、今回の事故で露わになった原発のリスクをThe Economistならではの視点で指摘しています。

日本について言えば、オペレータ(東電)と規制側(政府=経産省原子力安全・保安院)との関係に明快な線引きがない(一蓮托生という意味か?)こと。規制をして、オペレータが従えばそれでお終いという構造が、想定以上の津波や地震による被害への対応準備を脆弱化させたという批判は当たっていると思います。「想定の範囲では壊れることはありません」「それでもなお壊れたら?」というifに対する想像力と言うか、準備の考え方を調えておくことの重要性、でしょうか。もっとも平時においてはなかなかそこまでアタマが回らないのは洋の東西を問わず人間の限界みたいなところがあり、全く分野は異なりますが、以前ノーベル経済学賞を取った学者も参加していたLTCM社が経営破たんした時の「まさかそこまで状況が悪化するとは思わなかった」という説明や、サブプライムローン問題が発生する前の証券化を推し進めた金融業界の考え方が内包する問題も同根にあるような気がします。

今一つ、The Economistが長期の「リスク」だとしているのは、これで日本および米欧による原発推進はブレーキをかけざるを得なくなった、だとすると中期的に原発のノウハウは中国が中心になっていく、というシナリオです。確かに正鵠を得ているのですが、このタイミングで読者に問いかけるべき論点か?という批判もありそうで、読者からのコメントはこの点をスルーしたものがほとんどでした。