新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ヒール・アンド・トー

ネットでは6月18日号が流れています。

Leadersの一本目は「ばんそうこうかメルトダウンか」というタイトルで、今現在の世界経済を斬る内容の記事になっています。

日本を除くアジア諸国が経済過熱予防策を取りつつあることに比して、ギリシャ問題と、俗に言うPIIGSに足を引っ張られるヨーロッパ、債務問題に頭が痛いアメリカの弱さというアンバランスさが目立っていること、さしあたりとりあえずばんそうこうでも貼っておけば、という対応がいつメルトダウンにつながってもおかしくないというThe Economistの分析は正鵠を得ているように思います。

それにしても、「メルトダウン」はすっかりはやり言葉になりましたね。

レース車の運転で、厳しいコーナーを抜けるときなど片方の足でブレーキとアクセルを同時に踏み、減速しつつもエンジンの回転数を落とさずに素早い立ち上がりを仕掛けるという方法があるそうです。かかとでアクセル、つま先でブレーキを踏むことから「ヒール・アンド・トー」と言われるこの方法は、卓越したドライビングセンスがもたらす賜物だと思うのですが、ネットの普及でこれだけ複合的に繋がりあった「世界経済」の主体たちは、アジアでブレーキをかけつつ回転数を落とさずに、アメリカやヨーロッパ、そして地震から立ち直ろうとする日本をスムースに素早く立ち直らせるための適切なアクションを取れるのでしょうか。

米欧風の確立された民主政治のシステムとは異次元の「繋がり」がもたらす結果であるだけに、The Economistとしては疑心暗鬼で居ざるを得ない様子です。読者コメントにもそのあたりを指摘する声がありましたが、この一瞬も世界経済と言う名の車は高速で走っているわけですから、好むと好まざるにかかわらず、やってみるしかないんじゃないですかね。

日本経済のかじ取り役たちも、まずは「震災復興」を標榜しつつ、向け先となるアジア諸国がつまさきでブレーキを踏みつつあること、でもそれがすなわち経済の減速を意味する状況ではないことを(であってはいけないことを)肝に銘じて仕事してもらいたいものだと思います。