新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

教育という名の投資案件

9月17日号、ちょっと戻って巻頭のBriefingですが、教育(しかも中等教育)に関する興味深い分析記事が載っていましたのでそれについて。

日本でもメディアが良く取り上げる話題だと思うのですが、OECDが世界各国の15歳の学力比較をするPISAというテストを実施しています。記事が紹介していたのは2009年のデータですが、読解力・数学・理科の三科目においていずれも上海がトップの成績を取り、日本は8位・9位・5位という成績でした(全体の8位)。

The Economistはイギリスの雑誌なので、当然イギリスの成績(25位・18位・16位)を参照しつつ、総じて成績の振るわない米欧の国々と好成績を収めているアジアとの比較や背景の分析が行われるわけです。

ちなみに米欧にも、フィンランドやカナダのオンタリオ州のように好成績を残している例もあるので、注目度はどうしてもこちらのほうが高くなるようです。ま、当然といえば当然なのは、アジアと米欧では文化が違う、などという「蓋の閉めようのない」議論に与していては得られる解も得られないという心理ではないかと思われます。

イギリスの場合、今に至るまで社会を形成している身分制度と教育の在り方が密接に関係しているようで、中流以上とそれ以下の家庭で教育にかけられる予算が違うことが挙げられていますが、似たような貧富の差がある社会を持つオーストラリアは全体の9位と健闘し、貧富の差が激しいはずの上海は1位だということで、他に原因があるのではないかと更なる分析が加えられています。

如何にして中等教育のパフォーマンスを上げるか、たとえばポーランドが実施したような教育現場への分権化、オンタリオ州が実施している学校へのきめ細かい評価、ドイツが実施したレベルに合わせた教育の実施など、ヒントになる事例はたくさんあるようです。中でもなるほどと思わされたのは、フィンランドや韓国が実施しているという教師のレベルアップ(大学院卒であること、高給を保証することなどによる)政策で、これらの政策を組み合わせることにより、教育と言う名の投資を今よりさらに実りあるものへと高めて行けるのではないかとの議論には素直に賛意を示したいと思います。

社会には閉塞感が充満しつつある日本においても、「教育と言う名の投資案件」がその魅力を高めることは、閉塞感を打破するための重要な要素だろうと思います。そのためには、高いレベルの教育がしっかりしたリターンをもたらすというモデルを社会が提供する必要があるのだろうと思います。案外、イギリスにもそして日本にも、欠けている要素はこれだったりするかも知れないわけですが。