新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

商の中国、戦の米国

9月24日号のBanyanは、アジア太平洋を巡り経済的覇権を狙える位置についた中国と、引き続き同地域の軍事的覇権を握る位置にいるアメリカと各国の距離感について興味深い記事を載せています。その内容を一言でいえば、周辺各国は中国の台頭を懸念し、アメリカとの安全保障上の結びつきを強めるだろう、それに対して中国は安全保障面で自国の権益を増大させるために経済面の交渉力を押し立ててくるだろう、というような内容なのですが、確かに南沙諸島をめぐるフィリピンやベトナムとの対立、尖閣諸島沖の漁船体当たり事件や韓国の哨戒艇撃沈事件など、中国の対応は周辺諸国への十分すぎる脅威となりつつあるわけで、これらの国々が相互の結びつきを強めたり、アメリカに依存する度合いを強めるのは現状いたしかたないところだと思います。で、中国が「アメリカと安全保障を進める国とは取引しない」、的な締め付けをかけてくることも容易に予想されるわけですが、読者コメントには中国サポーターからの「中国は米英とは違い、力で支配しようという意図はないし、それを行ったこともない」的な発言が意外に支持を受けています(反米・反西欧的な立場の読者なら支持する発現と思われます)。

問題は、やったことがないという事実関係ではなく、今後どうするのか、についての理解が進んでいないことだと思うのです。これについては大陸進出に関するビジョンを世界に説明し遅れ、拙速で出した八紘一宇五族協和などのテーゼが結局は上滑りなまま戦略の失敗へと突き進んだ日本の説明ベタと、意外にも良く似ています。さらに悪いことには、その前時代性を自らも認める中国共産党政権が内外に抱える短期的な課題の多さで、中国が世界のリーダーとして平和と安定のビジョンを周辺諸国と共有できるようになるのは、だいぶ先の話ではないかと思われることですね。