新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

何がどういけないのか

10月29日号、前半のBriefingでは、市場から酷評されたEU首脳による通貨危機打開策に関する論評が載っています。すでに各メディアでも報じられているところですが、目につく施策とそれについて感じたことを少し。

まず、銀行の自己資本強化が謳われていますが、これをやると日本でもそうだったように、中小企業に対する貸し渋り貸しはがしを引き起こしかねず、欧州経済の末梢神経はしばらく痺れっぱなしになるのではないかという懸念が残ります。

次に、銀行債権への政府保証についてですが、政府に力や信用があるなら一旦ツケを引き受けるというのはおかしくないやり方だと思われます(実際、平成に入ってこの方、さまざまな景気刺激策の形を借りて日本政府がやってきたことは、言ってみれば政府がツケを肩代わりするプロセスだったわけで)。が、問題はヨーロッパの国々は個々をみればそれほど大きく信用があるわけではない、という点だろうと思うのです。個別の危機は先ず自助努力、という考え方の範疇に入る話だと思うのですが、各国の選良にそれだけの知恵があるのか?テクニカルな知見は集約されるべき要素ではないかと言う気がします。

また、強化される欧州金融安定化基金(EFSF)の融資能力について、これまでの4〜5倍の1兆ユーロ(約106兆円)にまで上積みすると言う話にしても、すでに嫁入り先の決まった金額が含まれるため、「真水」は2000億ユーロくらいだそうで、仮にスペインやイタリアを支援することになりでもすれば、またぞろおカネが足りなくなることは明白です。

そして何よりキワものだと思うのが、リーマン事件で悪名高いCDOなど金融商品を活用した外部資金の導入についてです。財テクそのものは理論的な裏付けを持っていて、あとは活用方法さえ誤らなければ、というのが導入を決定したロジックだと思うのですが、了解しておかなくてはならない話として、これらは決して安全な選択肢ではないということだと思います。

EFSF拡充について、早速中国あたりが「中国のおカネをあてにするならそれなりのリターンを」などというシグナルを発しているらしく、今後の中・欧間の駆け引きも注目されるところですが、それをも含めて「穴だらけで、込み入っていて、説得性がない」との評はここしばらくの円高基調を強化するだけに終わったかなという感じがします。