新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

種族の力

1月28日号のSchumpeterは、世界経済の枠組みについて興味深い論評を行っています。

かつて東西冷戦時代に「東側」「西側」で括られていた世界経済の枠組みが、ソ連崩壊に伴い90年代には「米国」「欧州」「日本」の三極で語られるようになり、最近は「先進国」と「新興国」で語られることが多くなったようですが、参照されているのは地理学者ジョエル・コトキン氏の議論で、文化的・言語的な近さが関係強化に役立つというお話です。同氏の考えによると、「中国圏」「インド圏」「英語圏」の3つの枠組みが世界経済の大枠を形成しているとのことなのですが。

読者コメントには「重複する要素があり、明快な分析とは言えない」「イギリス化したインド人はどっちに入る?」「ロシア語圏も成立するのでは?」等々の疑問も多く見られますが、相対的には国際経済のヘゲモニーを議論する取り組みについて好意的な意見が多かったように思います。

日本のメディアではせいぜい「先進国」「新興国」どまりで、どうかするとまだ西側、東側的なアタマのまま書かれているような記事にもお目にかかったりします。コトキン氏が参照しているのは14世紀のアラブの歴史家イブン・ハルドゥンが言ったとされる「集団の感情を共有することにより団結できる種族のみが砂漠では生き残れる」という考え方だそうですが、そう考えると小さくなったとはいえ「日本」は結構しっかりした「種族の力」の基盤なのかな、と思ってしまいますね。自分のところがしっかりしているから、どこが強いか、どこに追随するかなど、あまり鋭敏に考える必要がないとも言えます。アタマがなかなか切り替わらないのはそのせいかもしれません。