新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

中国経済を総括すると

5月26日号の特集記事は、中国経済がどのくらい強いのか、という多面的な分析を載せています。
結論から言えば、輸出による稼ぎは多く、貯蓄も多く、投資は堅調といえるものの、投資の収益性には疑問符が付くものも多く、個人消費は思った以上に伸びているがまだ低いレベルにあり、社会資本充実度はまだまだ低く、つまるところThe Economistとしては中国が「単に開発を課題とする時代は過ぎた」かもしれないが、「必要とされるほとんどすべてのモノ」を作り続け、なおかつ「富の再投資についてもっと上手な」対応をする必要がある、ということを言いたいようです。

記事を読んでいて、なかなか日本では報道されない分析ではないかと感じた点がいくつかあるのですが、その一つは「国営企業に対する利益誘導の構造」が経済の深部まで組み込まれ、法規制や政策に支えられる形で経済成長のエンジンになっている、と言う点です。保護された国営企業ですから、当然のようにコスト構造はスリム化されにくく、イノベーションは必ずしも収益のブレイクスルーに繋がらない反面、太子党をはじめとする社会のエスタブリッシュメントにとっては自身の存立基盤になってゆく、というあたりが見てとれます。かつての日本の三公社五現業みたいなイメージでしょうか?

今一つは、社会資本の充実度が低いわりに、「ムダ」とも見える投資案件がいくつも実施されていると言う点です。しかしながら事例として指摘されているのは、内蒙古にある古康巴什(Kangbashi)にある「チンギスハン広場」を訪れる人がほとんどいないと言う話や、ドバイのパルムジュベイラにも例えられる南岸・三亜の話です。日本も、経済的に見れば何だと思われるような地方の港湾整備や空港建設に相当収益率の低い投資をしてきたわけで、たとえば資源確保のためだったり、もしくは政治家による地元対策だったりする要素がどうしても避けられないとすると、このあたりは単純な批判だけでは片手落ちという気がしますね。

どの国もそうだと思うのですが、貧しい国が豊かになるプロセスにおいて、上手におカネを使うというのがいかに難しいことか。日本もそうでしたし、王族が大規模消費に励んだ中東の国々も、石油で豊かになった割に社会制度の変革を進めなかったカザフスタンもそうでした。先進国の開発マスタープランを店晒しにし、あげくのはて洪水を招いたタイをはじめとする東南アジアの国々においてもまた然り、と見ています。中国然り、そしてまた、資源景気に沸くモンゴルや民主化によりブームとなっているミャンマーでも似たようなものかもしれません。

上手くカネを使うこと、をある程度実現できれば、それが結果として世界経済の効率化に資することになるよ、The Economistは最後のところではそう言いたいのかな?私の読後感は、そんなところです、とりあえず。