新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

BOPがビジネスにもたらすもの

6月30日号のBusinessには、アメリカの、いや世界の二大食品・日用品メーカーであるP&Gユニリーバの明暗と、いわゆるBOPビジネスがそれに与えた影響について興味深い分析をしてくれています。この両者は食品から洗剤、化粧品まで日々の家庭生活で使われるさまざまな商品を作っている会社ですが、いずれも多国籍展開をする超大企業でいずれも範囲の経済と規模の経済を掛け算したようなビジネスモデルで大きくなってきたという共通点があります。なのにP&Gの業績は今ひとつ、であるのに対してユニリーバは増収増益なのだとか。

一つ示唆的なのは、P&Gが中国に大規模な拠点を有し、地元メーカーとの激烈な価格競争で体力を減らしていることに対してユニリーバは途上国の貧民層(BOP:Base of the pyramid)を対象とした戦略で大きな売り上げを実現しており、いわゆるBOPビジネスに対するスタンスに違いがある、ということだそうで。

ユニリーバがインドでやったこと、といえば有名なのはシャンプーの小口販売で、一回分のシャンプーを小さなパッケージに入れてそれを売る、しかも田舎の小さな店でも売る、という方法をとったことでしょう。この売り方で、たとえばインドネシアでは売り上げ全体の20%にあたる金額を得ているのだとか。先進国市場で支配的な、大型のポンプつきボトルに入ったシャンプーとは明らかに異質な商品です。

先進国において、シャンプーなどいわゆる最寄品と呼ばれる商品カテゴリーは、早い話が安売り目玉商品に使われやすく、平均収益率は常に低い水準におかれます(が、安定的にはけるという性格もあるので、むろんベースカーゴとしての重要性は高いわけですが)。こなた、意外に思われるかもしれませんがBOP向けの小口商品は大幅な値引きはされにくいという商品特性があり、元々の収益性は高くないとしても、販売努力が実れば結果として大きな売り上げに繋がる可能性はあるわけです。

規模の経済で勝負できる大企業向きの戦略、と言われてしまえばそれまでかもしれませんが、なにせ市場規模は上位層に対して比較にならない大きさを持っているということで、世の中の注目度も上がっているようです。やがて小口売り以外のマーケティング手法も登場するだろうと思われるBOPビジネスですが、そんなところからもイノベーションは起こしうる、という意味において良い事例だと思います。