新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

真の富とは〜Japan as No. 1 再び?〜

6月30日号のFree exchangeは、国連がまとめた国家の富に関する報告書について大変興味深い論評をしています。ケンブリッジ大学のダスグプタ教授がまとめたその報告書は、GDPなど言わば「短期的収益」の指標に加えて、国富の大きさ、すなわちバランスシート的な視点で国の力を評価しよう、というもので、インフラなど製造された物の価値、国土や環境、天然資源の価値に加えて国民の教育と技術を合算した評価指標について検討したものだそうです。その数値化プロセスや評価基準については議論のあるところだと思いますが、たとえば人材(人財、でしょうか)については教育程度、賃金水準およびいくつまで働けるかを主な指標として数値化がなされています。

絶対値だけではアメリカがトップなのですが、これを国民一人当たりに換算すると、なんと日本が世界トップ、という結果が出てきまして、なんだかちょっと信じられない気持です。一体日本はどうしてそんなに高く評価されたのか。内訳を見てみると、天然資源はほとんど寄与しておらず、インフラ・製造物がそこそこ(土建国家の面目躍如?)、なんといっても人材面での評価が高いのですが、これは高学歴化に加えて円高で人件費が実質以上に高く評価されていることや、世界一の長寿国ならではの長く働く高齢者の影響が大きいのではないかと思います。長く働くことが富なのか?と考えると、何だかちょっと複雑ではありますが。

報告書の考え方は、そう言う国であれば富を作り出す力が他の(たとえば国民の多くが働いていないような)国よりも大きいでしょう、と言うことのように思いますが、企業を診断する時と同じように、であればその力(バランスシート)を上手く使えているか=短期的収益につなげられているか、を見るのが正しいやり方だと思います。いわゆる資産効率と言う考え方ですが、さすがに報告書は新しい指標についてまとめられているだけで、資産効率がどうかというところまで踏み込んで解説してはいないようです。

GDPの成長率と掛け合わせて、大きな富を効率よく使えているのかどうか、具体的に計算した結果をぜひ知りたいものだと思いました。