新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

つかの間の

10月20日号のAsiaには、シアヌークカンボジア国王の死去と、それに伴いカンボジアに生じる将来への不安についての記事が出ています。確かに、カンボジア国民にとってはフランスからの独立を勝ち取り、対米戦争とそれに続く内戦の結果として生まれた新生カンボジアの象徴的存在だったという要素はあるわけで、ポルポトを闇とするときに光の役どころを演じた人であったろうとは思われますので、彼の死がもたらす変化は無視できないのでは、と言う議論もあるのかもしれません。

昨年から仕事でカンボジアに関わる機会があったので、その経験も加味して言うと、おそらくは短期的には何も変わらないだろうと思います。シハモニ現国王(シアヌークの息子)は、カンボジア人民党政府と良好な関係を保ち、政治好きだったと言われる父親とは異なって象徴的国王としての役割をしっかり果たしておられるようですし、カンボジア経済の好調ぶりや、若年層の成長意欲など、前国王の死が大きな変動要因になるとは思われない状況が続いているからです。

微妙な影響があるとすると、ASEANの中でも中国寄りと言われるカンボジアにあって、シアヌーク前国王は特に中国との関係を重視していたと言われています(かつての政治亡命先であり、今回も北京で客死)。前国王の死が、中国とカンボジアの関係に何らかの影響を及ぼす可能性は、もしかしたら何かあるのかもしれません。

インドシナの国はいずれもそうですが、中国系住民の経済面での活躍なくしては国が成り立たないと言われるくらい中国とは深くかかわっています。ただそれが、必ずしも北京の現政権とのつながりが第一というわけではないあたりに、長い歴史がもたらした複雑な構造が見て取れます。カンボジアもまた、中国とはさまざまな繋がりを持っている中で、北京とのホットラインのひとつが閉じられたという程度の整理は成り立つのかもしれません。