新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

サプライチェーンの問題?

10月20日号のBusinessには、尖閣諸島を巡る日中関係の悪化が日中間のビジネス、特にサプライチェーンの運営に大きな影響を及ぼしているという記事が出ています。この環境にあって、ユニクロや三菱自動車など、中長期の拡大路線を明らかにする会社もあるそうですが、中国市場の冷え込みは自動車産業などを中心として、サプライチェーン全体に多大な影響を及ぼしていることは間違いのないところだと思います。

原因は何であれ、サプライチェーンに影響が出る第一の理由は「予想に反して売れなくなること」な訳で、言いかえれば「予想通り(または管理可能な範囲でそれ以上に)売れてくれれば」基本的にはサプライチェーンの運営で困ることはないはずです。そう考えると、つまるところは市場の問題ではないかと言う議論も成り立つわけですが、今回の尖閣諸島を巡る問題の根深さを想起するに、もしかするとそれだけではなく、たとえば日系のメーカーに地場のサプライヤーが部品供給を拒否すると言った、まさにサプライチェーン上の問題も起きていたのではないかという疑義も生じます。現実問題として日本で報道されているのは、通関業務の滞りや、以前問題となったレアアースの輸出に制限がかかったことなどですが、サプライチェーン全体が機能するうえでどのような問題が発生したのか、網羅的な研究が待たれるところです。

記事はこの辺りにはスポットライトを当てていないので、果たしてどの程度そのような影響があったのか、この記事のみから発展させた議論は難しいのですが、現象的にはこれまでも多くの日系企業が採用した「チャイナ・プラス・ワン」戦略が、複数の国を対象とした「チャイナ・プラス」(2カ国以上と言う意味)へと変貌しつつあることを記事は伝えています(中国問題だけが原因とも言えませんが)。この動きが更に進んで、更に「ノン・チャイナ」へと舵を切る企業も出てくるのかもしれません。原料供給を除けば多くの日系企業はサプライチェーンの急所を中国に依存するという戦略とは距離を置いているのが現状だと思われますが、それと言えども例外はあったはずであろうと考えます。そう言う視点で今回の出来事を捉えると、実証的にサプライチェーンの動きを分析し、リスクマネジメントに役立つ知見を蓄える好機であると言うことも出来ようかと思います。

韓国やロシアをも含め、歴史や領土などさまざまな問題を抱えて行かざるを得ない市場環境の中、それらの問題を直視しつつ如何にリスクを管理できるかという課題に対応しない限り、グローバル化する経済の中で立ち位置を確保することは難しいということであろうと整理します。