新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

鏡を見るような?

11月10日号は、当たり前といえばそうですが、アメリカ大統領選挙の総括と今後の展望についての記事がLeadersのトップに来ています。

結果的にはオバマ大統領の順当勝ちと言えるのかもしれませんが、前回の熱狂とは程遠く、直前の経済統計やハリケーン被害への陣頭指揮ぶりに助けられた要素もあって、終わってみればの大量リードは必ずしも今後への期待に繋がるものではなかったと思います。共和党内では足元が定まらないことに最後まで批判がくすぶったロムニー候補に最後の最後まで接戦を強いられたあたりも、「弱い大統領」ぶりを見せつける結果になったのではないかと思います。

それでもまだ、アメリカと言う大国の指導者でありつづけることは、国際的に見ればオバマ氏が「強い」存在で居られる最大の条件だと思うのですが、彼が直面するさまざまな課題〜特に国内の財政問題〜について見ると、なんとも日本のそれと酷似していることに気づかされます。

まず、いわゆる財政の崖とよばれる各種時限立法措置の期限切れについてですが、日本にとっての赤字国債発行法案にも似て、経済の自転車操業を支える立法措置を、期限内に済ませなくてはならないこと、その前には「ねじれ国会」(アメリカは上院:民主党、下院:共和党)が大きく立ちはだかること、またそもそもの財政が過小な歳入と過大な歳出という慢性的赤字構造になっていること、そして政治家の多くは抜本的な構造改革に消極的でなければ百家争鳴状態で、国の体制を立て直すことについての展望が開けないことなど、アメリカと日本は実によく似ていることがわかります。

それでもまだ、争点を明確にして国民的な議論を経た指導者選びをしているアメリカは、内にこもった政局にあけくれる日本に比べると議論がまとまりやすいのではないかと思います。アメリカの体制が固まったことを受けて、それでは日本でも、という流れになるのは世界経済の構造を考えるとき、ある意味で自然な流れなのではないかと思いますが、中道的でモノを決めたくても決められない民主党・野田政権と、古い体質の右寄り政治家が目立つ自民党およびいわゆる第三極の対立構造という絵姿までは何とか理解できるのですが、自民党と第三極の違いはと言えば、官僚との関係くらいではないかと思われます。民主党の大敗までは見えていても、自民党と第三極が何をどうするのかについては、選挙結果に基づいて談合するしかない、というような絵姿が浮かびます。今の精度のままでは誰がやっても「先ず選挙、その後談合」というような、国民に見えにくい形でしか政治が動かないのは、どう考えても構造的欠陥だと思うのですが。そういう意味では「鏡を見るほどよく似た状況」に対応する日米両国の政治は、これが同じ民主国家かと思えるほど異なっている、と言うことかと思います。